N高等学校、半年間の成果を発表~スクーリング・部活編
ネットで学べる通信制高校・N高等学校。2016年10月13日に行なわれた実積発表会ではスクーリングや部活などの課外活動でもネットとリアル、両方の特性を活かしたコミュニティ形成についての実積も発表された。ここでは「学習」以外の活動全般についてレポートする。
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N高等学校、半年間の成果を発表~学習編
目次
ネットを活用した友だち作り
角川ドワンゴが運営するネットで学べる通信制高校「N高等学校(以下、N高)」が、開校から半年間の実積報告発表会を行なった。
レポート提出や大学受験対策など「学習」に関する実積報告では、生徒からおおむね高い評価が得られていたが(詳細は「N高等学校、半年間の成果を発表~学習編」を参照)、それ以外の学校生活に関する部分はどうだろうか。
N高は、友だち作りなどの学校生活もネットを活用していくことを基本方針として打ち出している。
「ネットの高校を作るにあたって、今の時代、ネットでも友だちはできる、ネットを中心としたコミュニティができるんだ、ということを取組みのひとつとさせていただいています。ネットだけでいいというわけではなく、ネットを中心として、そこからリアルに向けたコミュニティについても新しいいろんな取組みをしていきたいと思っています。今は、リアルな人間関係でもネットを使わないとコミュニケーションはできませんし、それならネット中心でもいいんじゃないかと」(N高理事・川上量生氏)
この半年間で、ネットを使ったコミュニティ作りの取組みとして「slack」「ネット遠足」「ネット部活」が行なわれた。ひとつひとつ詳細を見ていこう。
教師・生徒間のコミュニケーションツール「slack」
「slack」とはアメリカや日本のIT企業を中心に使われているコミュニケーションツールで、グループチャット、ダイレクトメッセージなどの機能を持つ。
現在93.3%のN高生が使用しており、1日の平均利用者数は500人前後。100人ごとにクラスチャンネルが作られ、ホームルームも「slack」上で毎日行なわれており、担任から生徒への伝達用に利用するほか、教師と生徒間、生徒同士が気軽にチャットすることも可能だ。また、生徒が自由にチャンネルを作ることもでき、2016年10月現在、341チャンネルが作られている。同じチャンネルで趣味の話をする中で、気の合う友だちを見つけるツールの役割を果たしている。
この「slack」は、学校の準備段階から理事である川上量生氏が導入を強く主張していたという。
「最近は、IT企業ではだいたいslackが使われてますが、特にエンジニアの中で人気があるコミュニケーションツールなんです。海外製のソフトで日本語化されてませんので、画面も英語です。そういうツールを高校生から使っていて、高校を卒業して就職の面接の際にする「slack使ってます」と言うと企業側としてはちょっと「おっ」となる。それも狙いです」(川上量生氏)。
「slack」の活用で担任と生徒の日々のコミュニケーションが円滑になり、その結果、担任に対する満足度は91.7%という結果になっている。
■「slack」の利用率
93.3%
「ドラクエX オンライン」の世界で「ネット遠足」
「ネット遠足」の目的は、ネット上でグループ交流を行い友だちを作ること。この「ネット遠足」が、オンラインゲームである「ドラゴンクエストX オンライン」の仮想世界内で行なわれる、ということが発表された時はさまざまな物議を醸したが、実際はどうだったのだろうか。
この「ネット遠足」はこれまでに6月20日と9月23日の二度開催されており、教師の引率のもと、生徒はゲーム内でN高の制服に着替えて集合し、鬼ごっこやキノコ狩り、記念撮影などで親交を深めたという。参加した生徒の満足度は92%と非常に高い評価を得た。
■参加した生徒の満足度
92%(次回も参加したいと回答した人100%)
サッカー部もネットで活動!「ネット部活」
「ネット部活」は現在、囲碁部、将棋部、サッカー部、音楽部、格闘ゲーム部、コンピュータ部、クイズ研究会などさまざまな部活動があり、毎月数回の活動をネット上で行なっている。
囲碁部、将棋部ではプロ棋士が顧問をつとめ、指導対局や校外トーナメントを行なっている。
サッカー部の活動はなんともユニーク。元日本代表の秋田豊氏が特別顧問を務めており、人気サッカーゲーム「ウイニングイレブン」を使用して(!)サッカーの戦略指導や試合内容について評価を受けるといった活動を行なっているという。
「指導のおかげで「ウイイレ」の実力がすごく上がったんです」(在校生)。
特別顧問の指導の効果もあり、「ウイイレ」の強さをはかるレーティングが400から1006へと大幅に向上し、全国ランキングが3位になった生徒もいる。
スクーリングやニコニコ超会議はリアルな場での友だち作り
コミュニティ形成のリアルな取組みとして、N高では「プレミアムスクーリング」「文化祭」「スタンフォード大学国際教育プログラム」などの取組みを行なっている。
沖縄本校での「プレミアムスクーリング」
沖縄の本校で行なわれる「プレミアムスクーリング」では、伊計島の自然や文化を利用した学習の場で、生徒同士が交流しながら楽しく学ぶことを目的としている。
2016年度は9月17日から5日間、初のスクーリングが沖縄の伊計本校で実施され、75名の生徒が参加した。生徒たちは毎日9時から20時まで、校舎での授業、沖縄の自然を活用した授業や沖縄の伝統文化を学ぶ特別活動などのカリキュラムをみっちりこなしたという。
「普通の学校に入っていたらできないことが体験出来ました。授業も先生も面白かった。映像の授業を受けるだけだと、友だちと雑談とかできないので参加して良かった」(在校生)。
生徒間の交流を深めるためにバーベキューやキャンプファイアーも行なわれ、さまざまな体験から生きた「学び」を得ることをできた。
なお、通信制高校の卒業要件である「スクーリング」はN高の場合、全国12か所のスクーリング会場でも行なわれている。
■参加した生徒の満足度
99%
アメリカの名門大学で国際交流「スタンフォード大学国際交流プログラム」
海外の生徒と交流し、新しい刺激と見識を得て海外の大学進学を視野に入れるための取組みが「スタンフォード大学国際教育プログラム」だ。2016年度は8月15日から26日まで実施され、N高生4名の他、灘高校から4名、慶応義塾湘南藤沢高校から2名、合計10名が参加した。スタンフォード大学は、アメリカ西海岸にあるハーバード、イェール、プリンストンなどに次ぐ名門大学で、アメリカ合衆国第31代大統領・ハーバート・フーヴァーもここの出身だ。
生徒たちは、スタンフォード大学が用意した特別な教育プログラムのもと、創造性、リーダーシップ、デザイン志向、問題解決、コミュニケーションなど最先端の学術プログラムを体験。さらに、世界中から集まる同年代の学生との交流を通じて大きな刺激を受けることもできた。
「新しい刺激になった面もあるし、自分の考え方が変わった面もあるし、新しい考え方を吸収できました。けっこう成長できたと思ってます」(在校生)。
ニコニコ超会議で「文化祭」
「文化祭」は、4月29日・30日に「ニコニコ超会議」内で行なわれた。「ニコニコ超会議」とは、N高の母体であるドワンゴが主催しているイベントで、「ニコニコ動画」内で行なわれることをリアルに再現することを目的としているほか、「ニコニコ動画」の新機能発表なども行なわれる。2012年から毎年開催されており、2016年のイベントでは総来場者数15万1115人を集めた。
この大規模なイベントの中で生徒たちは、フード販売、お化け屋敷、バンド演奏といった催し物の企画立案、事前準備、当日のブース運営を行い、実際の社会との接点の中で仲間とともに働くことの楽しさや苦労を学んだ。
「準備から参加したんですけど、どうやってこのイベントができているのか知ることができて楽しかったです」(在校生)。
「ひとつのものをみんなで作り上げたという達成感があります。みんな仲良くなれて満足しています」(在校生)。
■参加人数
425名
■参加した生徒の満足度
93%
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