引きこもりに対する公的機関のサポートとその利用方法
さまざまな理由があって、部屋から出られない……そんな「引きこもり」と呼ばれる状態にある人は珍しくありません。引きこもりから立ち直り、再び社会と関われるように、公的機関が様々なサポートを提供しています。ここではそのサポートの一部を紹介します。
目次
厚生労働省が「引きこもり対策推進事業」を創設し、対策に乗り出す
厚生労働省の調査によると、現在「引きこもり」と呼ばれる状態にある人は、全体で69.6万人にもなると言われており、大きな問題になっています。
厚生労働省では平成21年度より、精神保健福祉、児童福祉、ニート対策等の取組に加え、「引きこもり対策推進事業」を創設し、引きこもり対策の一層の充実に取り組んでいます。引きこもり状態にある人やその家族に対して、医療・学習・就労など様々な面でサポートを行っています。
「引きこもり」の定義については、こちらの記事(「引きこもり」とは?引きこもりの定義と統計データ)でも詳しく解説しています。
引きこもりへの支援を行なっている公的機関
引きこもり地域支援センター
厚生労働省では平成21年度から、引きこもりに特化した第一次相談窓口としての機能を有する「引きこもり地域支援センター」を全国の都道府県・指定都市に整備を進めています。このセンターは、本人や家族の方が、地域の中で最初にどこに相談したらよいかを明確にすることにより、より支援に結びつきやすくすることを目的にしたもので、平成28年6月時点で、東京都・大阪府・京都府・福岡市など全国67の自治体に設置されています。
また、宮城県・岡山県・川崎市・名古屋市など7つの自治体においては、自治体単独事業として「引きこもり専用の相談窓口」が設置されています。
「ひきこもり地域支援センター」の設置状況リスト(厚生労働省ホームページ)
「引きこもり地域支援センター」では、引きこもりに関する相談を受けたら、必要に応じて医療機関や就労支援機関などと連携を取って支援に当たってくれます。
社会福祉士や精神保健福祉士、臨床心理士といった「引きこもり支援コーディネーター」と呼ばれる人がいるので、専門的な支援が受けられるのも特徴です。
相談方法や相談日時などは、各都道府県や指定都市のホームページに掲載されていることが多いので、併せてチェックしましょう。相談料は基本的に無料です。
引きこもりに関する相談をする時、人によっては「相談したって何も変わらないだろう」と最初からあきらめてしまっている人も珍しくありません。中には、色々なところに相談したけれど、窓口をたらいまわしにされて、何も支援が受けられなかったという人もいるでしょう。
しかし、「引きこもり地域支援センター」であれば、引きこもりに関する相談に一か所で対応できるので、窓口をたらいまわしにされる心配が少なくて済みます。
必要があれば医療機関や福祉に関する機関、ハローワークなどの就労に関わる機関とも連携を取ってくれるので、安心してください。
また、「引きこもり地域支援センター」では、「引きこもりサポーター派遣事業」という取り組みも行っています。「引きこもりサポーター」とは、ひきこもっている本人や家族を訪問して相談に乗ってくれる人です。
「引きこもりサポーター」の中には「ピアサポーター」と呼ばれる人も居ます。「ピアサポーター」の人たちは、昔引きこもりだった経験がある人たちで、自分の経験もふまえて相談に乗ってくれるので、とても心強いのではないでしょうか。
「引きこもりサポーター」の人たちは、きちんと研修を受けた専門家です。安心して相談してください。
精神保健福祉センター
各都道府県に設置されている「精神保険福祉センター」は、本来こころを病んでしまった人の自立と社会復帰支援を行なうための施設ですが、引きこもりに関する相談も受け付けています。
「精神保健福祉センター」に出向いて相談するだけでなく、センターによっては電話で相談することも可能です。この「心の電話相談室」は、匿名での相談も受け付けています。電話で概要を聞いた後に、、簡単な助言や専門の医療機関または相談機関に関する情報を提供してくれます。
相談専用電話:03-3834-4102
受付時間:月〜金曜日 午前9時〜午後5時(年末年始・祝日を除く)
引きこもり期間が長くなると、うつなどの精神疾患を発症してしまうケースは少なくありません。逆に、精神疾患が原因で、引きこもりになってしまう、という場合もあります。不安に感じたら、すぐに専門家に相談してみましょう。
地域若者サポートステーション
「働くことに不安がある」「上手に人とコミュニケーションをとれるか不安だ」「やりたいことが見つからない」など、働くことに対して不安を抱えた人をサポーするために開設されているのが「地域若者サポートステーション」です。愛称を「サポステ」と言います。
「サポステ」は15歳から39歳までの人が利用でき、コミュニケーション訓練や就労体験などを通じた就労支援を行っています。運営は厚生労働省から業務委託された株式会社やNPOで、キャリアカウンセラーによる専門的な相談も受けつけています。
平成23年度以降のデータによると、毎年3万〜4万人の人が「サポステ」を利用し、そのうちの40〜60%近くの人が、就職を決めています(正規・非正規含む)。
平成27年度地域若者サポートステーション事業の実績
「サポステ」は平成28年時点で、全国に160か所開設されています。
まとめ
引きこもりに対するサポートを行なっている公的機関を紹介しました。
ひきこもってしまったら、早めに専門機関に相談するようにしましょう。本人だけでなく家族の人も相談できるので、気軽に相談してみてください。
ひきこもっている期間が短ければ、それだけ社会からの孤立の解消も早いと言われています。若ければ、ひきこもっていた期間があったとしても、再スタートを切るのは難しいことではありません。そのためには必要な支援を積極的に受けることです。
社会との接点を持ち続けることが、引きこもりから立ち直るには必要不可欠だと言えるのではないでしょうか。