子どもが不登校になってしまった原因と対応・高校生編

多感な時期である高校生は不登校が起こりやすい時期と言えます。しかし、高校は義務教育ではないため、不登校のままずっと在籍することは難しいのが現状です。ここでは退学や留年といったリスクも含め、高校時代の不登校についてお話したいと思います。

子どもが不登校になってしまった原因とその対応・高校生編

高校時代に起こりがちな不登校の原因

高校時代に起こりがちな不登校の原因はさまざまですが、いずれの場合も退学や留年といった結果に結びつきやすいのが特徴です。

子どもが不登校になった場合は、早めに行動を起こすことが高校以降の将来を左右します。必要な場合は通信制高校への編入も含めて検討すると良いでしょう。

高校時代によく見られる不登校の原因は以下の通りです。

  1. 無気力…30.9%
  2. 不安など情緒的混乱…18.0%
  3. あそび・非行…10.4%
  4. いじめを除く友人関係をめぐる問題…8.3%
  5. 学業の不振…7.7%

 

この他にも、病気により不登校になっていたり、親子関係に問題があったりする場合、学校になじめなかったり、不登校の背景にいじめがあったりするケースも確認されています。

しかし、いずれの場合も全体から見た割合は決して多くはありません。

 

1. 無気力…30.9%

全体の3割を占める不登校の理由が「無気力」です。なんとなく学校に行きたくないとか、なんとなくやる気が起きない、目標が見えないといったことから不登校になってしまう子どもが少なくありません。こうなってしまう背景には、「高校に入学すること」がゴールになってしまっていることが考えられます。

中学三年生になって受験勉強をする子どもがほとんどですが、高校に入学することがゴールになってしまっていて、その後どう過ごしたいかというビジョンが見えていない子どもが、高校合格後に無気力に陥ってしまうことが珍しくないのです。

高校入学後に無気力になってしまうのを防ぐためには、「高校に入学した後、どんなことがしたいか」「将来、どんな大人になりたいか」といった長い目で見たビジョンを日頃から親子で話し合うことが重要です。子どもの意見を尊重しつつ、親として、大人としてアドバイスしましょう。

過度なプレッシャーや大人の希望を押し付けることは、子どもにとって大きな負担になります。「そんなことではダメだ」とか「無気力なんて甘えている証拠だ」と叱咤したくなる気持ちもわかりますが、そこは否定ではなく「何かやりたいことはないのか?」とか「将来はどんなふうになりたいの?」といった考えるきっかけを与える声掛けを行いましょう。

高校生のあなたに試してほしいこと
高校に入学したら、一気にやる気がなくなってしまった――という人は珍しくありません。中学の時、高校に合格するために必死になって勉強したけれど、高校に合格した後のことはあまり考えていなかったという人も多いのではないでしょうか。

あるいは、思い描いていた高校生活と実際の高校生活の間に開きがあって、やる気がなくなっている人もいるでしょう。そんな時は、ぜひ将来のことを考えてみてください。

将来どんな職業に就きたいのか。将来どんな大人になりたいのか。そのためには、今何をすべきなのか。ぜひ周りの大人の人といろいろなことを話してみてください。
本を読むのも良いでしょう。本には、人生のヒントがたくさん詰まっています。いろいろな本を読んで、ぜひ自分の「未来」について考えてみてください。

 

2. 不安など情緒的混乱…18.0%

思春期は、非常に心も体も多感な時期です。大人が気にも留めないようなことで傷ついたり、不安な気持ちが強くなったりしてしまいます。

心の不調は、早めにケアをすることで回復が早くなります。ある程度自分の中で気持ちを整理して対処することも必要ですが、もし体の不調やパニックといった形で心の不調が表に出てきているようであれば、一度専門家のケアを受けたほうが良いでしょう。

子どもは、親に心配をかけまいとつい無理をして頑張りすぎてしまう傾向があります。食欲がないとか、顔色が優れない、眠れていないといった症状が出ている場合は、早めに本人から話を聞くことが重要です。

また、本人が辛い時にいつでも大人に話ができるよう、日頃から「話しやすい環境づくり」を行うようにしましょう。

高校生のあなたに試してほしいこと
高校生のあなたの心は、とても柔らかく、傷つきやすいと言えます。大人の人にとっては気にも留めないようなことで傷ついたり、揺れ動いたりするのが高校生のあなたの心です。どうか、その心の悲鳴を無視しないでください。

不安な気持ちが強くて学校に行けなかったり、学校に行くことを考えると眠れなかったりしていませんか?

そんな時は、まず一番身近な大人の人に相談してみましょう。心の悲鳴を無視していると、徐々に心が壊れていきます。その結果、心が病んでしまうこともあるのです。

「大人に心配をかけたくない」とあなたは思うかもしれません。でも、あなたの心は悲鳴を上げています。心が疲れ果ててしまう前に、きちんと労わってあげましょう。信頼できる大人の人や友達に気持ちを打ち明けるだけでも、今の辛い気持ちが楽になることもあります。

 

3. あそび・非行…10.4%

高校生になって、今までよりもぐっと交友関係が拡がるとともに、あそびや非行を行うグループとの付き合いが始まることもあります。

あそびや非行で不登校になる子どもも…あそびや非行で不登校になる子どもは全体の10.4%と決して少なくありません。もし子どもがあそびや非行で不登校になってしまっているようなら、大人として毅然とした態度で対応しましょう。

非行は、本人の将来に大きな影を落とします。学校・警察と連携を取り、軽度なうちに非行を止めさせることが重要です。その上で、不登校を続けているとどのようなリスクがあるかをしっかり話すようにしましょう。

万が一警察に補導されて高校を退学になってしまったら、将来の職業選択の際、学歴が無いことで希望する職業に就けなくなる可能性があること。犯罪を行うことで、将来の選択肢がどんどん狭まっていくことなど、あそび・非行のリスクを包み隠さず話してください。

そして、本人に非行やあそびに誘うグループとの付き合いを止めるように諭しましょう。怒鳴るのは逆効果です。静かに、忍耐強く諭してください。その際に、「仕返しをされるかもしれない」と本人が不安がる場合があります。そんな時は、大人がしっかりと本人を守ることを伝えてください。

高校生のあなたがすべきこと
あそびや非行が楽しくて、学校に行きたくない・学校に行くのが馬鹿馬鹿しいという気持ちになる高校生は珍しくありません。

しかし万引きなどの窃盗や物を壊すことは、犯罪です。犯罪を犯したら、きちんとその罪を償わなくてはいけません。逮捕されなければいいや、バレなければいいや……そう思っていても、そういった行為は必ず誰かに見られています。

あなたのその行動が、あなたの将来をボロボロにしてしまうとしたら、どうしますか?罪を犯せば、経歴に「前科一犯」という傷がつきます。

高校を卒業しなければ、学歴は中卒のままです。その経歴では、就ける職業の幅が限りなく狭くなってしまうのが現代の日本です。まずあなたがすべきことは、非行や悪いあそびに誘ってくる人たちとの縁を切ることです。

仕返しが怖いかもしれません。でも、あなたの周囲の大人はあなたをしっかりと守ってくれます。あなたの将来・人生を守るために、きちんと「NO」を言える勇気を持ってください。

 

4. いじめを除く友人関係をめぐる問題…8.3%

高校生になって交友関係が複雑になるとともに、人間関係のトラブルも複雑になってきます。

最近では、スマートフォンの普及により、LINEのように親の見えないところで友達と交流することも珍しくなくなりました。大人の目が届かない交友関係は、子どもの自立のためにある程度は必要でしょう。しかし、大人の目が届かないからこそ複雑なトラブルに発展してしまうことも少なくないのです。

子どもの交友関係に深入りしすぎると、かえって事を大きくしてしまったり、拗らせてしまったりすることがあります。子どもの話をしっかり聞いて、大人としてどうすべきかをアドバイスするのが重要です。

その時も「そんな人とは縁を切ってしまいなさい!」とか「向こうが一方的に悪い!」と断定するようなことは避けてください。大事なのは子ども自身にどうすべきかを考えさせ、決断させることです。もし子どもがトラブルに巻き込まれそうになった場合は大人の出番ですが、必要以上に口出しをせず、子どもの様子を見守りましょう。

高校生のあなたに試してほしいこと
友達との関係は、非常に難しいものです。あれを言ったら嫌われてしまうんじゃないか、これを言ったら仲間外れにされるんじゃないか……そういった恐怖心と隣り合わせにあるのが、友達付き合いではないでしょうか。

そんな時は、その友達とどんな関係を築いていきたいのかじっくり考えてみましょう。なんでも言い合える友達が良いですか?友達の言うことになんでもYESとしか言えない関係が良いですか?その人とどんな関係になりたいのかを考えてみると、その人に対してどう対応すべきかが見えてくるのではないでしょうか。

今の時代はLINEやメールといった「親に見られないで済むツール」が発達しています。それは非常に便利なものですが、一方で思わぬトラブルに巻き込まれてしまう危険性もあるものです。もし、無視されているとか嫌がらせをされているような場合は、きちんと大人の人に知らせましょう。大人の人はあなたの先輩です。あなたのように友達との関係に悩んだこともあります。きっと良いアドバイスをくれるはずです。

 

5. 学業の不振…7.7%

高校に入ると、中学校とは違い学習内容の難易度が格段に上がります。成績が留年や内申書などに直結してしまうため、学業の不振から学校へ行く気をなくしてしまう子どもも珍しくないのです。また、以外にも中学生まで成績優秀だった子どもが、レベルの高い高校に進学したことで、周囲のレベルの高さに自信を失い不登校になってしまう、というケースもよく聞かれます。

身近な大人は、ぜひ子どもの自信を育てる声掛けをしてください。できないことだけに目を向けるのではなく、本人が得意なことや克服できた苦手なこと、日頃から頑張っていることに目を向けて、「すごい」「よくがんばったね」と肯定的な声掛けをして本人の自己肯定感(自分で自分を認める力)を伸ばしてあげてください。

「自分は何をやってもダメなんだ」

「自分はなんて最低な人間なんだろう」

本人がこういった気持ちになっている時こそ、積極的に声掛けをしましょう。

「君は○○が苦手かもしれないけれど、△△は得意だよね」

「毎日がんばって□□をしていて偉いね」

など、本人が別の視点から自分を見つめ直すきっかけに気付ける声掛けをするのが効果的です。

高校生のあなたに試してほしいこと
高校になって勉強の内容がむずかしくなり、どうしても付いていけず、勉強が苦手なために学校に行きたくない気持ちになっていませんか?

そんな時は、別な面から自分自身を見つめ直してみましょう。学校で勉強することは確かに大事なことです。しかし、人間は勉強だけできても生きていくことはできません。

あなたの得意なことはなんですか? 毎日続けていることはありませんか?

あなたは確かに勉強が苦手かもしれませんが、それ以外に良い所もたくさんあるのです。

でも、勉強ができないのは困りますね。そんな時は、休み時間などに先生に質問に行きましょう。先生に聞きに行きづらいのであれば、勉強の得意な友達に教えてもらうのも良いでしょう。「わからないことをそのままにしない」のが大切です。

 

このほかの理由

上で述べたような理由の他にも、病気による欠席や親子関係の問題といった原因で不登校になっている子どももいます。

病気の場合は、病気をしっかり治療することが重要です。学校に復帰するよりもまず、健康を優先しましょう。親子関係の問題が根底にある場合は、一度カウンセラーなどの第三者に間に入ってもらうのが効果的です。家族外の人の目から見た問題点を指摘してもらい、もう一度親子関係を構築し直す必要があります。

他には生活環境の急激な変化や、学校への不適応などで不登校になる生徒もいますので、子どもが不登校になった場合は原因をしっかりと見極め、一人一人に合った対応をする必要があります。

 

高校生の不登校とその後

高校生の場合、不登校になると留年や退学といった結果が待っています。大人は不登校の結果、留年・退学になった場合のデメリットを包み隠さず話してください。その時、決して脅すような口調で話すことはしないようにしましょう。冷静に、客観的な事実を淡々と述べるようにしてください。

不登校への公的支援に関して、こちらの記事(不登校に対する公的機関のサポートとその利用方法とは?)でも詳しく解説しています。

 

出典
平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について(文部科学省)

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