子どもが不登校になってしまった原因と対応・中学生編

思春期になると、体や心に変化が現れます。また、中学校に進学すると、大きく環境が変わるため、戸惑ってしまう子どもも少なくありません。ここでは、中学時代に起こりがちな不登校の原因やその背景、そして本人と保護者として取るべき対応などをお話します。

子どもが不登校になってしまった原因と対応・中学生編

中学生に起こりがちな不登校の原因とその対応

平成26年度の文部科学省の調査では、主な不登校の原因は以下の通りです。

  1. 不安など情緒的混乱…28.1%
  2. 無気力…26.7%
  3. いじめを除く友人関係をめぐる問題…15.4%
  4. 学業の不振…9.3%
  5. 親子関係をめぐる問題…8.8%
  6. あそび・非行…8.4%

不登校の原因別に、詳細に対応方法を紹介していきます。

 

1. 不安などの情緒的混乱…28.1%

この場合、子ども自身が環境の変化にデリケートだったり、慣れない環境で無理をし過ぎたことで適応障害を起こしている場合が考えられます。

親や先生などまわりの大人は「無理をしてでも登校すれば慣れるものだ」と叱咤激励したくなる気持ちはわかりますが、無理をし過ぎた結果、パニックを起こしたり、強烈な不安に悩まされているのです。

もし、子どもが無理をしていると感じたら、まずはゆっくり話を聞いてあげましょう。

この時アドバイスをしたり、「甘えるな」「みんな同じ気持ちでも頑張っている」というような言葉がけは子どもを追い詰めることになりかねません。お茶でも飲みながら、黙って子どもの話に耳を傾けましょう。

もし不安が強すぎて眠れないとか食欲がないといった症状が出ている場合は、医師に相談してみるのも一つの方法です。子どもの中で気持ちの整理が付けば落ち着くことも多いので、慌てず騒がず見守ることも重要です。

中学生のあなたに試してほしいこと
もし学校に行くことを考えるとからだの具合が悪くなったり、不安な気持ちが強くなる場合は、早めに家族の人や先生に相談しましょう。不安な気持ちは、自分一人で抱え込んでいると、どんどん強くなっていきます。言葉にすることで気持ちが楽になることもあります。

 

2. 無気力…26.7%

無気力が原因の場合、どうして無気力になってしまったのかの原因を探る必要があります。

  • 部活動で、いくら努力しても報われず自暴自棄になっている
  • 勉強が難しかったり、逆に簡単すぎたりしてやる気をなくしている
  • 「どうして勉強するんだろう」「どうして生きているんだろう」というような答えの無い問いにとらわれて、虚しい気持ちになっている

さまざまな原因が考えられますが、親が頭ごなしに「勉強しなさい」「学校に行きなさい」といっても、子どもは反発するだけです。

まずは、どうしてやる気が出ないのかをはっきりさせましょう。そして、子どもがやる気になれるものに取り組ませ、子ども自身に「やればできる」「楽しい」という気持ちを持たせることが重要です。

大人でも、厳しく叱咤され続ければ徐々にやる気が失われていきます。子どもであればなおさらです。頭ごなしに「おまえはダメだ!」「そんなことを考えている暇があったら勉強しろ!」ということはしてはいけません。

子ども自身がしてきた努力や成長を認めて、褒めて、自信や自己肯定感(自分自身を認める感覚)を育てましょう。

中学生のあなたに試してほしいこと
「何もやる気が起きない」というのは、誰にでもあることです。大人でもそういう時があります。そういう状態が続くと「なんて自分はダメなんだろう」とか「このままじゃダメだ!」という気持ちが強くなってくるかもしれません。
そんな時は、その日自分ができたことに目を向けましょう。今日はいつもより早く起きることができたとか、今日はごはんを残さず食べられたとか、小さなことで構いません。そして、「やる気が起きない」ということを身近な大人の人に話してみましょう。きっと良いアドバイスをくれるはずです。

 

3. いじめを除く友人関係をめぐる問題…15.4%

いじめを除く友人関係が不登校の原因にある場合、大人が積極的に介入するのは望ましくありません。

いじめの場合は大人が積極的に介入し、子どもの命と心を守る必要がありますが、この場合は下手に大人が介入すると拗れ、いじめに発展してしまう場合も珍しくないのです。

不登校の原因はさまざま特に女子生徒の場合、思春期になると仲の良い数人でグループを作ることが多くなります。普段は仲が良くても、ふとしたことがきっかけで無視したり、仲間外れにしたりするのが女子のグループです。

一人のリーダー格の生徒の意見に同意しなければならなかったり、皆と同じでなければならなかったりと、グループの中に暗黙の了解があることもあります。もしそれを破ってしまったら、そのグループのメンバーから攻撃されてしまうのです。

それというのも、女性は「仲間意識」を非常に大切にするためだと言われています。

「一人で過ごせばいい」と大人は思うかもしれませんが、子どもには子どもの、学校には学校の「社会」があります。大人の世界よりもちっぽけで狭いその社会では、良くも悪くも他人との結びつきが強く、大人のように無関心でいることは難しいのです。

特に学校であれば「協調性」や「社会性」ということも重要視されます。一人で過ごしていると「協調性が無い」「社会性が無い」というレッテルを、教師に貼られてしまうこともあるのです。

子どもはまだまだ未熟です。大人のようにふるまうことはできません。大人としてできることは、経験を元にしたアドバイスや話を聞くことぐらいです。

悩みながら、迷いながら子どもは成長していきます。思春期に入って、友達とこれまでとは違う付き合い方をする場面も増えてくるでしょう。やって良いこと・悪いことの線引きはしっかりしつつも、ある程度子どもに裁量を持たせ、自立を促すのも大人の大事な役目です。

しかしながら、もしも

  • 持ち物が壊されたり無くなったりする
  • 子どもの表情が暗く、食欲不振や不眠が続く
  • 学校から帰ってくるとケガをしている

といった兆候が見られた場合は、「子どもどうしの悪ふざけ」などと思わず、すぐに学校や警察と連携を取ってください。

人間関係の悩みを超えて、いじめに発展してしまっている可能性があります。

いじめによって不登校になる生徒の割合は、全体の1.1%と他の原因に比べて低い値を示していますが、決して他人事ではありません。

中学生のあなたに試してほしいこと
友だちとの関係は、中学生のあなたにとってとても大事なものだと思います。だからこそ悩みの種になるのです。確かに一人で居ると寂しいと感じるかもしれません。でも、一人でいることは悪いことではないのです。一度、友だちとどういう関係を築いていきたいのかじっくりと考えてみてください。

友だちの言うことになんでも「YES」と言うだけ関係なのか。
それとも、いけないことは「ダメだよ!」と言える関係なのか。表面的な付き合いの関係なのか、嬉しいことだけでなく悲しいことや悩みごともお互いに話し合える関係なのか。一度、その友達だちとどんな友だちになりたいのかを考えてみましょう。

もし無視されたり、嫌がらせなどを受けているのであれば、早めに身近な大人の人に相談しましょう。

 

4. 学業の不振…9.3%

中学校に進学すると、それまで習ってきたことよりも授業や教科書が数段難しくなります。小学校とは全く違う勉強です。

子どもの中には、学習内容の進歩についていくことができず、学業の不振から不登校になってしまう子どももいます。この場合は積極的に学校と連携を取り、必要があれば家庭教師や塾などで学校での学習をサポートしましょう。学校の先生に事情を話して、何か工夫できるところは無いか考えてみるのも一つの方法です。

「勉強ができないから、学校に行く意味は無い」

と言う子どももいるかもしれません。

しかし、現在の日本において、学歴は職業を選択する上で非常に重要なものであること事実です。中学校は義務教育のため特に試験を受けたりせずに卒業できたとしても、不登校生徒は高校への進学が他の生徒と比べて困難であると言わざるを得ないのが現実です。

中卒の学歴では選択できる職業の幅も格段に狭くなる、将来なりたいものがある場合でも学歴のためになれなくなってしまうことがある、ということを子どもに対して包み隠さず話すようにしましょう。

中学生のあなたに試してほしいこと
「勉強ができないから学校に行きたくない」という気持ちは、わからないものではありません。ですが、勉強をしないでいると、夢を叶えられなかったり、就きたい職業に就けなかったりということが実際に起こってしまうのです。
わからないことがあったら、早めに先生に質問をしに行きましょう。
先生に質問しにくいなら、勉強が得意な友達に教えてもらうのも良いかもしれません。
「わからないことをそのままにしない」ということが勉強ができるようになるコツです。

 

5. 親子関係をめぐる問題…8.8%

親子関係をめぐる問題が根底にある場合、家族内でこれを解決するのは非常に困難であると言えます。

親自身、子どもに対して「こういう大人になってほしい」「こういう子どもであるべきだ」という理想を押し付けている場合も少なくなく、現実と親からのプレッシャーで板挟みになってしまっている子どもも珍しくないのです。

多くの場合、親自身は子どもに過度なプレッシャーを掛けているという自覚はありません。この場合は、カウンセラーなどの専門家に間に入ってもらうようにしましょう。客観的な立場から、親子関係の問題点を指摘してもらえます。

中学生の時期は、自立心が芽生える時期でもあります。言い換えれば、親離れ・子離れの時期です。いつまでも子どもを手元に置いて可愛がりたい気持ちはわかりますが、子どもも一人の人間である以上、いつかは親の元を離れていきます。

大人として注意すべきところは注意する一方、ある程度子どもに自由を与えることも子どもの成長には大切なことです。親子関係の問題が根底にある場合は、家族だけで解決しようとせず、専門家へ助けを求めることも考えましょう。

中学生のあなたに試してほしいこと
中学生になると、何かと口うるさい親がうっとうしいと感じられることもあると思います。それは自然な反応で、思春期になると多くの人が同じように感じるものです。

ですが、親もあなたが憎たらしくて口うるさくしているのではないことを理解しましょう。
あなたはまだ子どもで、何かあったときに自分で責任を取ることはできません。親は、そんなあなたが事件や事故に巻き込まれないように、あなたを守るために厳しくしている部分もあるのです。

もし親との関係に悩んだ時は、一度スクールカウンセラーの先生に相談してみましょう。家族以外の人の目で見て、あなたと親の直したほうが良いところを教えてくれるはずです。

 

6. あそび・非行…8.4%

中学生になると、大人や世間への反抗からあそびや非行に走る子どもも珍しくありません。

この場合、放っておくと子ども自身の将来にしこりを残すので、親は毅然として対処する必要があります。

  • 帰りが遅くなる
  • 金遣いが荒くなる
  • 服装が乱れる

といった兆候が見られたら、エスカレートしないうちに、その都度諭すことが効果的です。

「やめなさい!」と大きな声を上げるのではなく、あくまでも辛抱強く静かに「諭す」ようにしましょう。非行の芽は早く摘み取る必要があります。あそびや非行を注意する一方で、本人の頑張りや良い所を褒める「愛情」もたっぷりと与えてください。

中学生のあなたがすべきこと
友だちや先輩からの誘いは、断るのに大変勇気が要ります。でも、万引きなどの窃盗や、物を壊したりすることはやってはいけないことです。勇気を出して断りましょう。そして、家族や学校の先生に話をしましょう。

一度悪いことをすると、どんどん悪いことをするようになってしまいます。まずは悪いことに手を出さないことが重要です。気持ちを強く持って、勇気を出して断りましょう。
仕返しが心配な時は、大人の人に守ってもらいましょう。

そして、どんなに怖い先輩でも、仲の良い友だちでも「悪いことをしよう」と誘ってくる人とは付き合わない勇気を持ちましょう。

 

この他にも、病気による欠席7.8%、意図的な拒否4.9%といった理由が、不登校のきっかけとして比較的多いものと言えます。また、家庭の生活環境の急激な変化や、学校への不適応、家庭内の不和、部活動やクラブ活動の問題なども不登校の要因として挙げられます。

一方で、教職員との関係をめぐる問題やいじめはそれぞれ1.6%、1.1%と全体から見て決して多いとは言えません。

しかし、数は少ないながらも子どもの将来に大きな影響を与えるのがいじめです。いじめが原因で不登校になった場合、肉体的・精神的に大きな傷を負っていることが珍しくありません。精神疾患を発症し、その後の将来が大きく歪んでしまう子どもも居ます。

 

それぞれ原因に合った対処法を

大人は、子どもが不登校になってしまうと

  • 自分の育て方が悪かったんじゃないか
  • 不登校になるなんて心が弱い
  • 学校に行かないなんて怠けている

といった態度を取ってしまいがちです。

しかし、大事なのは不登校になってしまったことを嘆くことではなく、これからどうしていくかではないでしょうか。必要があれば関係機関と連携し、子どもにとって最善の道を子どもと一緒に探していくことが周囲の大人ができることです。

そのためには、不登校になってしまった原因をしっかりと把握しなければなりません。日頃から子どもと話をする機会を設け、お互いに必要なことをきちんと話せる環境を作っておきましょう。

不登校への公的支援に関して、こちらの記事(不登校に対する公的機関のサポートとその利用方法とは?)でも詳しく解説しています。

 

出典
平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について(文部科学省)

自分に合った通信制高校・サポート校を探そう!

通信制高校ガイド|自分にピッタリの通信制高校・サポート校がきっと見つかる!
資料請求はカンタン&無料!
自分にぴったりの通信制高校・サポート校を見つけよう!