全日制・定時制・通信制の高校入試の違い
全日制か定時制か、または通信制か…高校の進路で悩んだ時に気になるのが、入学試験ですよね。「自分の学力で試験をパスできるのか、そもそも内申点は足りるのか…」そんな入試に対する不安や疑問を解決すべく、それぞれの高校の入試方法について解説していきます。
1.全日制高校の入試の傾向
平成28年度より都立高校の入試制度が変更
全日制高校の入試は、基本的に「学力検査+内申点+面接」の合計点によって合否が決まります。主に一般入試と推薦入試の二つの方法がありますが、一般入試よりも推薦入試の方が、より内申点を重視する傾向にあります。内申点に不安を抱えている人は、一般入試での合格を目指すのがいいでしょう。また、高校によっては合否判定に内申点が一切影響しないという場合も。以下では、公立高校・私立高校それぞれの一般入試について詳しく述べていきます。
公立高校の入試
〔学力検査〕
試験科目は「国語・数学・英語・理科・社会」の5教科が基本となります。しかし、普通科以外の専門学科を受験する場合は、国語・数学・英語の3教科となったり、体育や美術などの実技試験が行われることも。入試問題は各都道府県下で共通となりますが、一部の高校では自校で作成した問題が出題されることもあるようです。
〔内申点〕
内申点とは、中学での各教科の評定を点数化したもの。公立高校では、主にこの内申点と学力検査の結果との総合点で合否が決まります。<学力検査:内申点>の比率は各都道府県や高校によっても異なりますから注意しましょう。
〔面接〕
面接の有無は都道府県や高校によって異なります。神奈川県や静岡県、秋田県など一部の県では、面接が必須となっている場合も。入試要項を確認してみましょう。
全日制公立高校の都道府県による入試の傾向の違い
東京都の場合
平成28年度入試から大幅に改変された都立高校の入試制度。共通問題を使用するすべての高校でマークシート方式が導入され、受験科目は「第一次前期募集または分割前期募集」では原則5教科(国数英社理)、「第二次募集または分割後期募集」では原則3教科(国数英)となりました。<学力検査:内申点>の比率も、「第一次前期募集または分割前期募集」は7:3、「第二次募集または分割後期募集」は6:4と、全高校で統一されています。
神奈川県の場合
面接必須となる神奈川県の公立高校では、学力検査+内申点+面接の総合点で合否が決まります。<学力検査:内申点:面接>の比率は各高校によって異なりますが、4:4:2としている高校が多いようです。他に3:5:2や5:3:2とする高校も多く見られます(2017年度入試データより)。神奈川県の公立入試で押さえておきたいのが「2次選考」というワード。1次選考で残った定員数の10%を選出するこの2次選考では、学力検査と面接の結果のみで合否が決まります。内申点は一切影響しないため、実力さえあれば公立高校に受かる可能性があるのです。
私立高校の入試
〔学力検査〕
学力検査は「国語・数学・英語」の3教科で行われることが多いようです。なかには、「国語・数学・英語・理科・社会」の5教科を課す高校もあります。高校ごとに試験問題も異なるため、その高校に合わせた受験対策が必要となるでしょう。過去問題の入手は必須です。
〔内申点〕
推薦入試や、単願や併願などの優遇制度を利用する場合は内申点が重視されますが、私立高校には「フリー受験」や「オープン型入試」と呼ばれる学力勝負型の入試方法が存在します。その場合、内申点は加味されず、当日の学力検査の結果のみで合否が判定されます。
〔面接〕
面接の有無は高校によって異なります。入試要項を確認してみましょう。
全日制私立高校の都道府県による入試の傾向の違い
東京都の場合
東京都の私立高校の一般入試では、3教科(国数英)+面接というパターンが多め。なかには2教科+作文+面接を行う高校や、実技試験を課す高校もあるようです。推薦入試とは別に、一般入試で「第一志望優遇制度」や「併願優遇制度」などを実施している高校も多いですが、この場合は内申点も加味されます。
神奈川県の場合
神奈川県の私立高校は、オープン型入試を取り入れているところが多いのが特徴です。推薦入試とは別に、一般入試で「専願優遇制度」や「併願優遇制度」などを実施している高校も多いですが、この場合は内申点も加味されます。
内申点が低くても全日制高校に受かる方法
内申点に不安があっても、学力検査のみで合否判定を行うオープン型入試やフリー受験を利用すれば、全日制高校に合格することは可能です。やや狭き門ではありますが、「内申点は低いけれど勉強は好き」という人は、私立の一般入試を選択肢に入れてみるのもいいでしょう。公立の場合はやはり内申重視の傾向にあるようです。自分が住んでいる都道府県の傾向を調べてみましょう。
2.定時制高校の入試の傾向
学びたい気持ちが大事!自分に合った高校を選んで
定時制高校の入試は、学力よりも勉強への意欲や学びたいという気持ちを重視する傾向にあり、全日制に比べればさほど難しいものではありません。しかし、志望者が全て合格するわけではないので油断は禁物。自分の目標が「高校卒業」なのか「大学進学」なのかによっても入試のレベルは大きく違ってきます。
〔学力検査〕
受験科目は「国語・数学・英語」の3教科というところがほとんどです。20歳以上の受験に関しては、学力検査を行わないという高校も。「定時制に偏差値は関係ない」と言われていますが、一般的には42~43程度の高校が多いようです。しかし中には、大学進学を目指す人が集まるような高校もあり、偏差値71というところも。「定時制はどこも同じでしょ?」と考えてはいけません。全日制同様、自分に見合った高校選びが重要です。
〔内申点〕
定時制高校を受験する場合も、内申書(調査書)を提出する必要があります。しかし、社会人などへも広く門戸を開いている定時制では、内申点は実際の合否にはあまり影響しないようです。
〔面接〕
定時制高校の入試において重視されるのが面接です。面接の態度が悪い人・やる気が見られない人は不合格となる場合が多いので注意しましょう。所要時間は10分程度、受験生1人に対し面接官数人で面接を行います。質問内容は
- 中学時代にがんばったことや一番の思い出
- 高校でがんばりたいこと
- 卒業後の夢
- 自己PR
など、いたってシンプル。正しい解答があるわけではありませんから、訊かれたことに素直に答えていけば大丈夫です。わからないことに関しては正直にわかりませんと言いましょう。
定時制高校の都道府県による入試の傾向の違い
東京都の場合
東京都には平成28年度時点で59校(公立55校、私立4校)の定時制高校があります。入試科目は3教科(国数英)となっており、加えて論文を課す高校もあるようです。平成29年度の最終応募状況を見ると、応募倍率はだいたい1倍前後となっています。なかでも、
- 東京都立浅草高等学校 (1.65倍)
- 東京都立八王子拓真高等学校 (2.21倍)
などは、倍率が高めになっています。
神奈川県の場合
神奈川県には平成28年度時点で21校(公立21校、私立0校)の定時制高校があります。入試科目は3教科(国数英)となっており、加えて作文を課す高校もあるようです。学科試験は教科書の基礎レベルの問題が中心。競争倍率の県平均は平成28年度が0.73倍、平成27年度は0.82倍と低め。しかし、
- 横浜市立横浜総合高等学校(単位制総合学科Ⅱ部) (1.49倍)
- 神奈川県立相模向陽館高等学校(単位制普通科午前部) (1.30倍)
などは、倍率がやや高めになっています。
合格ラインは高校によってさまざま。倍率も要チェック!
定時制は私立よりも公立の方が圧倒的に多く、入試の難易度は各都道府県でバラつきがあるようです。定員割れしている場合でも、合格点に満たない学生は不合格とする高校もありますから要注意。人気の高い高校はそれだけ競争率も高いですから、学力にあまり自信がない人は倍率の低い高校を狙うことをオススメします。
3.通信制高校の入試の傾向
学力も内申点も関係なし。入試ハードルの低い通信制
通信制高校の入試は、落とすことを目的としたものではありません。あくまで「受け入れるため」に行われるものですから、合格率もかなり高め。面接や作文などを重視して合否を決定します。公立よりも私立校が多く、高校により入試方法が異なります。
〔学力検査〕
いわゆる学力検査は行わないところがほとんど(公立の場合は課す場合も)。作文などの軽い筆記テストが課されます。作文は与えられたテーマを元に自分の考えを書くというもの。
- 志望理由
- 卒業後の夢
- 卒業への意欲
などについて問われることが多いようです。この課題は、文章の良し悪しを見るためのものではありませんから、リラックスして素直な気持ちを書きましょう。とはいえ、誤字脱字はないように心がけましょう。
〔内申点〕
通信制高校では内申点を合否の判断に用いることはほとんどありません。
〔面接〕
ほとんどの高校で面接が行われます。時間は10分~20分程度、個人面接の場合もあれば、集団で行われるケースも。保護者同伴の面接を行う高校も多くあります。集団での面接は難しいという人は、事前に高校へ相談すれば配慮してくれる場合もあるようです。質問事項は
- 志望理由
- 通信制高校を選んだ理由
- 中学時代の思い出
など、簡単な内容のものばかりなので安心を。また、「不登校だったことを話すと不利になるかも…」といった心配もいりません。自分の状況を正直に話しましょう。
高校や都道府県による入試の違い
- 飛鳥未来高等学校
書類選考と面接試験で合否判定。また、学校説明会への参加が必須となります。 - ルネサンス高等学校
書類選考にて合否判定。面接は必要に応じて行われ、学力検査はありません。 - 第一学院高等学校
通学コースの場合は、保護者同伴の面接、作文による合否判定となります。個別指導コースの場合は書類選考のみ。スポーツコースの場合は、事前説明会と練習会参加の上、学科試験・面接・実技テストが行われます。 - 東京都の公立校
国語・数学・英語を総合した60分の学科試験が課されます。 - 神奈川県の公立校
面接または作文のみの選考で、学力検査は行われません。
合格できるかどうか不安なら在宅制がオススメ
通信制高校の中には、競争倍率がなんと7倍という超人気校もあります。確実に合格したいという人は、倍率の低い高校を選んだ方がいいでしょう。また、通学制よりも在宅制(広域通信制)を選ぶのがおすすめ。自宅学習を中心とする在宅制は定員を多くとる傾向があるため、そのぶん合格の可能性も高まるのです。
まとめ
全日制高校、定時制高校、通信制高校の中で最も入試ハードルが低いのは、学力検査もなく内申点も影響しない通信制高校であるといえるでしょう。まずは、高校で何をしたいのか(高校生活を楽しみたい・資格の勉強を頑張りたいなど)、卒業後はどうしたいのか(就職したい・大学へ進学したいなど)を考えること大切です。目標を定めてから、今の自分にとってベストな進路を見つけていきましょう。