N高等学校、半年間の成果を発表~学習編
角川ドワンゴがネットだけの通信制高校を設立する!と話題になった「N高等学校」。去る2016年10月13日に新コースの発表とあわせて、開校から半年間の実積発表も行なった。このページでは「学習」に関する報告内容をレポートしていく。
角川ドワンゴが運営するN高等学校が2017年度より新コースを開設
N高等学校、半年間の成果を発表~スクーリング・部活編
目次
開校から半年。「学習」部分に関する成果は?
2016年4月に開校した「N高等学校(以下、N高)」。歴史ある大手出版社であり、同時にニコニコ動画の運営など最先端のIT企業の複合体である「角川ドワンゴ」が運営する、ネットで学べる通信制高校ということで、発表時はメディアでも大きく取り上げられ話題になった。
そのN高等学校が2016年10月13日に「N高等学校 実積・通学コースに関する発表会」を実施。開校から半年間のさまざまな実積を詳細なデータとともに公表した。
株式会社カドカワの代表取締役であり、N高の理事も務める川上量生氏は発表会の冒頭で「本来、“教育”の成果というものは時間がかかるものです。通常であれば、(高校に入るための)入試があって3年かかって卒業して、その後どうだったか、というところまでの実積を見て、初めて評価されるべきものだと思います。僕らは世の中を変える、という思いでN校を作ったので、半年間というのは教育としては短い期間ですけれど、その期間の中で僕らはどういうことをやってきしたのか、どういう成果を出してきたのかを知っていただきたいと思って、発表会という場を設けさせていただきました」と語る。
まずは「学習」に関して、その数字を項目ごとに見ていこう。
ネットとリアルを融合した学習システムに関する報告
前提として、N高では学習に関して大きく「高校卒業のための学習」「大学受験対策のための学習」「職業につながるための学習」の3種類に分類している。
レポート提出率は92.6%
「高校卒業のための学習」として、N高ではPCやスマホを使ったネットの映像授業を行なっている。この授業を受講することが、通常の通信制高校での「レポート提出」に相当いるので郵送の手間もがかからない点が魅力だ。また、授業のわからない点もネットを通じて質問できるようになっており、担任からネットや電話を通じて学習サポートも受けられる。その結果、8月時点での92.6%の生徒がレポート提出を進めているとのこと。この数値は通学のない通信制高校としては非常に高い数値と言える。
有名予備校講師によるネット授業「N予備校 大学受験講座」の満足度は83.8%
「大学受験対策のための学習」としてN高が用意しているのが「N予備校 大学受験講座」だ。この講座では、有名予備校講師と生徒がネットを通じて双方向でやりとりが可能になっている。問題集や参考書・約50冊分に相当するデジタル教材を提供し、本格的な受験勉強をネットを活用して行なっている。また、この講座はN高生以外にも解放している。
「現在、ネットを使った教育の仕組みはたくさんありますけど、現時点では、N高のものが世界一優れていると思います。注目していただきのは、教材をネットでの指導用に1から作った点です。これまでにあったものを流用したものではなく、ネット上で使う教材としてもっともベストだと思う物を一流の先生方に作っていただき、そしてその先生が自ら直接授業をします。そして先生方も、ネットで教えるということに対して、どんどん進化している。生徒と一緒に教え方も進化しています」(川上量生氏)
今後は、志望校合格のため生徒に対しネットを通した個別指導を活発化させていく予定だ。
■利用者数(2016年10月現在)
N高生:272名、 一般ユーザー: 7000名以上
■利用したN高生の満足度
83.8%
大幅に偏差値アップ!「代ゼミNスクール」
さらに、「大学受験対策のための学習」のリアルな取組みとして、大手進学予備校・代々木ゼミナールと提携した「代ゼミNスクール」がある。
映像授業のほか、代々木ゼミナールに通学し、受験勉強のプロフェッショナルから対面で授業が受けられる「代ゼミNスクール」には現在18名の生徒が通学している。実際に通っている生徒は「先生のレベルが高い。映像の授業もいいが、対面の授業が良い。来て損はないって言い切れる」と語っている。
■生徒の偏差値の推移
5月(記述式) | 7月(マーク) | 志望校 | ||
Uさん | 51 | → | 67 | 横浜市立大学 |
K君 | 41 | → | 48 | 東京電機大学 |
N君 | 26 | → | 38 | 東海大学 |
東大合格に特化した「N塾」。順調に生徒の偏差値が上昇
「N塾」は「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話(ビリギャル)」の著者である坪田信貴氏が塾長を務め、全寮制で東大合格を目標に学習を行なうコースだ。
全寮制ということもあり生徒数は多くないが、どの生徒も確実に偏差値がアップしている。
「やっぱり寮なのが良いですね。自宅だと集中が乱されるので…。ムダな時間が一切なくてしっかり勉強に集中できるのがいいところだと思います」(在校生)。
N高にはさまざまなコースやカリキュラムがあるが、このN塾の開校に関しては、川上量生氏がもっとも強いこだわりを持っていたという。
「入学前に、“N高に行きたい、これこそ望んでいた学校だ”と言ってくれる生徒さんはいっぱいいたんですけど、保護者の方は反対される、というケースがけっこうありました。新設校だという理由もあると思います。そうすると、我々が良い教育を提供します、ということを保護者の方に理解していただくには“実積”が必要だろうと。その方法のひとつとして、“東大を目指すレベルの生徒にもN高は対応できる”ということを証明するためにこのコースを作りました。坪田先生も強い決意をもって取り組んでいただいてます」(川上量生氏)。
このN塾では、2016年度1月入塾生の追加募集を行なう。対象は現役の高1・高2の男子生徒。
また、これまで男子生徒のみの募集だったが2017年度からは女子生徒にも対象を拡大する。2017年4月入塾生は現中3〜高2の男女が対象だ。
■生徒数
受験者:30名
試験合格・入塾者数:7名
※1ケ月で2名がリタイア
2016年10月現在在籍生徒数:5名(3年生2名、2年生3名)
■在校生の偏差値の変化
科目 | 入塾時 (センター過去問) |
偏差値 (概算) |
8月時点 (マーク模試) |
偏差値 | |||
3年生 | T君 (文系) |
英語 (200点満点) |
75点 | 41.2 | → | 155点 | 66.7 |
数学Ⅰ A | 38点 | 41.4 | → | 68点 | 59.0 | ||
日本史 | 55点 | 44.4 | → | 73点 | 64.2 | ||
H君 (理系) |
英語 (200点満点) |
35点 | 31.7 | → | 141点 | 60.4 | |
数学Ⅰ B | 24点 | 34.4 | → | 74点 | 62.4 | ||
数学Ⅱ B | 8点 | 32.0 | → | 69点 | 58.2 |
科目 | 5月時点 (マーク模試) |
偏差値 | 8月時点 (マーク模試) |
偏差値 | |||
2年生 | H君 (理系) |
英語 (200点満点) |
90点 | 48.3 | → | 188点 | 76.1 |
数学ⅠA | 67点 | 54.6 | → | 92点 | 72.7 | ||
数学ⅡB | 16点 | 34.0 | → | 52点 | 50.3 |
プログラムコンテスト出場者も!「N予備校 専門学習」
「職業につながる学習」のひとつとして、ドワンゴの現役プログラマーが直接指導する、プログラミングの授業を用意。この授業では最先端のプログラミング技術をネットを介して双方向授業で学ぶことが可能で、基礎から始めて最終的にはニコニコ動画のようなサービスを構築するレベルまで成長することを目的としている。
「プログラマーになるためプログラミングの授業を受けています。授業がない日もコードを書きながら自習を行なっています」(在校生)。
生徒の中には、すでにwebプログラミングコンテストに出場した人が6名、パソコン甲子園に出場した人が4名いる。
■生徒数
287名
バンタンと提携し、即戦力をつける
N高では、創立50年の歴史を持つ専門学校で、ファッションやヘアメイク、アニメ、ゲームなどさまざまな業界に人材を排出するバンタングループと提携し、「職業につながる学習」も行なっている。N高生であれば誰でもバンタングループの専門学校のカリキュラムを受講し、さまざまな職業につながる技術を習得できるのだ。
「パティシェ」のコースでは、調理器具メーカー・貝印が主催する「スイーツ甲子園」で関東大会優勝者を輩出している。
また、プログラマーとして世界に出て活躍するための知識とスキルを1年間で習得することを目的とする「プログラマーズ・ハイレベル・ハイスクール」では、この半年間でチームに分かれて実際の開発現場と同じ流れで実践的な開発を行ない、複雑なシステムのロールプレイングゲームや独創的なシミュレーションゲーム、webサービスなどを制作している。
「ほかの学校に通っていても人と変わらないことしかできないけど、ここにくれば普通の高校に通っている内容プラス新たなことが得られる。大変だけどその分充実感がある」(在校生)。
開校から半年で、3割の生徒の技術力は企業の開発現場でも通用するレベルになってきているという。 今後、LINE、チームラボ、はてな、ドワンゴといったIT企業でインターンシップや研修に参加し、最先端のITの現場を体験する。
地方自治体と連携した合宿型の職業体験の満足度は100%
「職業につながる学習」の最後は、全国の自治体と連携し、その地域の特性を活かした職業体験プログラムに関するもの。このプログラムは、職業体験を通じて、生徒が社会との新たな接点を持ち、自分の将来の進路や職業に対して考えるきっかけを作ることを目的としている。
初年度である2016年度には全国で18のプログラムを用意し、この半年間で7つのプログラムが実施されている。78名が申し込み、抽選の結果36名が参加。
■ 実施された体験プログラム
刀鍛冶体験(広島県庄原市) 申込30名 参加5名
イカ釣り漁船体験(山口県長門市) 申込12名 参加6名
図書館司書体験(佐賀県武雄市) 申込17名 参加5名
酪農体験(北海道稚内市) 申込11名 参加8名
宿坊の僧侶体験(和歌山県高野山) 申込9名 参加5名
パティシェ体験(沖縄県うるま市) 申込8名 参加3名
川舟・船大工体験(三重県紀宝市) 申込4名 参加4名
すべてのプログラムが5日間の合宿型で、朝から晩までその職業を体験した。
刀鍛冶体験では砂鉄の収集、製鉄、鍛錬を行い、5日間で1本の小刀を完成させる。商品の企画から生産まで一連の行程を体験。イカ釣り漁業体験では、漁だけでなく、自分たちで獲ったイカを実際の市場に出荷して売上集計し、収穫から販売まで一連の行程を体験。
どのプログラムでも体験として学んだことを、自分のノウハウとして身に付けるため事前にグループ学習で下調べなどを行い、体験後は学んだことを地元の方々の前で発表を行なった。
「今の日本には、すごく面白いし、国としても残していきたい、でも後継者がいない、という仕事がたくさんあります。そういう仕事の体験をしてもらう、というカリキュラムです。ふだん、デジタルやITの最先端をやっている我々としては、むしろ真逆の仕事ばかりです(笑)。
参加した生徒からも、受け入れ先からも評判がすごく高くて、最終日に全員が泣いているという現場になりました」(川上量生氏)。
今後より多くの生徒が参加できるよう、体験プログラムを増やしていく予定だ。
■参加したN高生の満足度
100%
(内96.3%の生徒が「自分の将来について考えるきっかけになった」と回答)
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