数理科学教育への取り組み、教員を補助するリモートワーカー、N高の新たな動き

学校法人角川ドワンゴ学園は2019年10月15日に記者発表会を開き、“ネットの高校”として話題のN高等学校(以下、N高)の活動を振り返りつつ、今後の数理科学教育への取り組みと、教育体制の動きについて発表しました。

数理科学教育への取り組み、教員を補助するリモートワーカー、N高の新たな動き

約半年で統計検定合格者が誕生、「高校の範囲を超える発展的な数学」に注力

N高は2016年度の開校以来約3年半が経過しました。ネットで学ぶ通信制高校としてスタートしましたが、その後に通学コースも新設し、仙台、代々木、御茶ノ水、横浜、大宮、立川、千葉、柏、名古屋、心斎橋、江坂、京都、福岡の13キャンパスを開設。生徒数は2019年10月時点で1万人超の11,317人に及びます。

2020年度には池袋、札幌、神戸、広島、横浜金港、名駅にもキャンパスを広げ、全国19キャンパスに拡大予定です。

この間、学内においてもさまざまな動きがあり、特筆すべきはカリキュラムの充実。開校当初からカリキュラムに「プログラミング」を取り入れていましたが、開校翌年の2017年度はスマートフォンアプリ、コンピュータサイエンス、大規模Webアプリを学べる内容に発展。

2018年度には新たに「Webデザイン」や、運営母体のドワンゴのノウハウを生かした「ニコニコAIスクール」をカリキュラムに追加。

2019年度は「高校の範囲を超える発展的な数学」として統計学などの教育にも広がっています。

今回の発表会で角川ドワンゴ学園の夏野剛理事は、発展的な数学をカリキュラムに加えたきっかけとして、投資部に触れました。

投資部はN高のネット部活の1つで、ほかに起業を目指す起業部、ゲームのスキルアップを目指すeスポーツ部などがある中、投資部では株式投資を通して、社会の仕組みや経済動向を学びます。

「投資部では統計学がきっちりと学んで投資を進めていきますが、これを発展的な数学としてN高では力を入れていきます」と夏野剛理事は話します。

そこで、N高で数学教育の顧問を務め、「高校の範囲を超える発展的な数学」を担当する東京工業大学・加藤文元教授が登壇し、次のように話しました。

「N高ではR言語を用いた実践的な統計授業を行っていまして、(カリキュラムが始まってから)半年しか経っていませんが、生徒の数名が統計検定3級に合格し、実績につながっています。

高度な数学に興味があっても、学ぶのは大学に入学するまで待たなければならない、という生徒のために、2020年度に向け、微分方程式、圏論、量子コンピュータに関する教材を開発しているところです」

N高では、N高生に限らず、広く中高生向けの発展的な学びの場への支援を実施しています。

主なものは次の3つです。

■数理の翼 伊計島セミナー
全国の数理科学に強い関心を抱く中高生向けの合宿形式セミナー。

■数理空間トポス
中高で学ぶ範囲を超えた現代数学に興味のある中高生のための場。

■数学デー in N高
年齢を問わず楽しみながら数学で「遊ぶ」部屋のような場。

「以前は板書で計算していたことを今ではコンピュータに任せて、人間は現実への応用をより良く考えればいいと私は解釈していますが」という夏野剛理事の言葉に続き、加藤文元教授は「数学は自然現象や経済現象や社会現象の理解につながります。

エンジニアリングやテクノロジーの時代にあって数学はとても重要ですので、プログラミングだけ、数学だけ、ということではなく、両方できる人が社会に貢献できると思います」と話しました。

角川ドワンゴ学園の夏野剛理事

角川ドワンゴ学園の夏野剛理事

N高で数学教育の顧問を務める東京工業大学・加藤文元教授

N高で数学教育の顧問を務める東京工業大学・加藤文元教授

年々カリキュラムが充実

年々カリキュラムが充実

 [数理科学教育に力を入れるN高

数理科学教育に力を入れるN高

 

教員の負担を減らすなど、教育体制の確立へ

N高は、生徒やキャンパスの数が増え、カリキュラムが多彩となる一方、その教育体制も確立していきました。

開校から現在までの生徒数、先生数(教員、TA=ティーチング・アシスタント)数、先生1名に対する生徒数の割合の推移は次のとおりです。

【2016年4月】
生徒数:1,482名
先生数:22名(教員数:22名・TA数:0名)
割合:67.4名

【2017年4月】
生徒数:3,868名
先生数:75名(教員数:34名・TA数:41名)
割合:51.6名

【2018年4月】
生徒数:6,549名
先生数:152名(教員数:64名・TA数:88名)
割合:43.1名

【2019年4月】
生徒数:10,399名
先生数:243名(教員数:118名・TA数:125名)
割合:42.5名

先生1名に対する生徒数が年々少なくなり、それだけ生徒1名に対するケアを手厚く、先生1名に対する負荷を軽減してきました。また、教員がより生徒に向き合える体制として次の取り組みを実施しています。

システム化
■自動化
○合格・不合格に応じたメール送信
○学籍確定時のメール送信
○請求書の住所出し分け
○卒号可否の登録

テクニカルサポート
■お問い合わせ対応
○設定方法が不明な場合
○生徒・保護者からお問い合わせ

■担任連絡補助
○学習進捗状況の確認
○面接指導記録の記録

■その他事務作業
○各種アンケート対応
○備品の管理・発注
○スクーリング出欠確認・登録
○ハローワークイベントリスト化・企業確認
○郵送物の授受・送付
○ファイリング

リモートワーク
■確認・調査業務
○教材・Webサイト等の誤植確認
○同好会推移調査

■入力業務
○各種データ入力
○求人票
○教職員FAQ

■学習計画作成補助
○スクーリング時間割作成補助
○進路指導調査書・推薦書作成補助

この中で「システム化」と「テクニカルサポート」は、ドワンゴの持つインターネットやICTのノウハウを生かせますが、注目されるのは「リモートワーク」。シングルマザーの在宅ワークで教員の負担を減らそうという試みですが、2019年4月に採用したのはシングルマザー10名と介護者1名で、このうち5名は教員免許取得者で、N高のリモートワーカーとして力を発揮し始めているようです。

なお、N高の「リモートワーク」では教員免許取得支援制度を導入しており、今回の11名のリモートワーカーのうち2名が同制度を利用。働きながら教員免許の取得を目指しています。

開校から現在までの生徒数、先生数(教員、TA=ティーチング・アシスタント)数、先生1名に対する生徒数の割合の推移

開校から現在までの生徒数、先生数(教員、TA=ティーチング・アシスタント)数、先生1名に対する生徒数の割合の推移

教員がより生徒に向き合える体制としての取り組み

教員がより生徒に向き合える体制としての取り組み

教員の負担軽減が期待される「リモートワーク」

教員の負担軽減が期待される「リモートワーク」

 2019年4月に11名のリモートワーカーを採用

2019年4月に11名のリモートワーカーを採用

 

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