高卒認定試験、過去問から見る「生物基礎」の傾向と対策

理科系科目の中でも合格率が高いと言われている生物基礎。物理や化学に比べ内容をイメージしやすく計算問題も少ないことから、文系志望の人にも好まれやすい教科でしょう。ここでは、過去問題を読み解きながら、生物基礎の出題傾向や対策について解説していきます。

高卒認定試験、過去問から見る「生物基礎」の傾向と対策

1.「生物基礎」の問題構成と出題範囲

 

理系が苦手な人には生物基礎がオススメ

高卒認定試験の理科は選択制で、自分の得意な科目を選んで受験することができます。選択科目は以下のとおり。「科学と人間生活」を選択するか否かで、科目数が変わってきます。

「科学と人間生活」を選択する場合 「科学と人間生活」を選択しない場合
物理基礎
化学基礎
生物基礎
地学基礎
この中から1科目を選択
(合計科目)
物理基礎
化学基礎
生物基礎
地学基礎
この中から3科目を選択
(合計科目)

 

過去問を参考にする際は平成26年度以降のものを

平成26年度以降、新課程に基づき大幅に出題範囲が変更された「生物基礎」。以前は「生物Ⅰ」という名称でした。誤って平成25年度以前の過去問題を参考にしないように注意してください。生物基礎は全問共通の大問5題で構成されています。平成26・27年度は小問25問でしたが、平成28年度は小問20問へと減少。問題数に関しては今後も様子見が必要でしょう。生物基礎の問題構成と大まかな出題範囲は以下の通りです。

大問1 生物の特徴 4~5問(合計20点)
大問2 遺伝子とそのはたらき 4~5問(合計20点)
大問3 生物の体内環境の維持 4~5問(合計20点)
大問4 植生の多様性と分布 4~5問(合計20点)
大問5 生態系とその保全 4~5問(合計20点)

 

目指すは8~10問正解! 広く浅く、教科書全体から出題

生物基礎の1問あたりの配点は4~5点です。8~10問正解を目指せば、合格ラインの40点を突破することができるでしょう。難易度は教科書の基礎レベル。教科書全体からまんべんなく出題されますが、そこまで掘り下げた内容の問題はないので安心を。

 

2.「生物基礎」の5つの出題傾向と対策

 

暗記力がカギ!8割が知識問題の生物基礎

図やデータを読み解く問題よりも、知識量が問われる生物基礎。教科書全体から出題されるため、覚えなくてはならない単語や知識も膨大です。問題文から答えを導き出せるといったようなラッキー問題はあまり見られませんが、勉強した分だけ結果にしっかり結びつく教科とも言えます。

 

【1】大問1 生物の特徴

大問1では、「生物の特徴」について出題されます。生物をつくる「細胞」や、生物の「エネルギーの使い方」について、重点的に学習しておきましょう。とくに「ATP(アデノシン三リン酸)」に関する問題は定番中の定番ですから要チェック。過去問題を見ながら、押さえるべきポイントと出題傾向を探っていきましょう。

 

細胞の構造やはたらきについて

細胞の特徴や各部位の名称など、教科書の重要語句は必ず暗記を。動物細胞と植物細胞、原核細胞と真核細胞の違いについてもしっかり押さえておきましょう。

 

(平成26年度第一回試験問題より)

(平成26年度第一回試験問題より)

「核がなく、DNAが細胞内を満たす液状の部分に存在する細胞」は原核細胞ですね。真核細胞とは、核を持ち、核内にDNAが存在する細胞のこと。また、「ミトコンドリアや葉緑体などの特定の機能をもつ」器官のことを細胞小器官といいます。細胞質基質はその逆で、細胞質から細胞小器官を除いた部分を指します。原核細胞にあてはまるのは大腸菌で、インフルエンザウイルスなどのウイルスは細胞構造を持ちません。よって、①の組み合わせが正しいとわかります。

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

核の内部にあるDNAとタンパク質からなるものは染色体です。「細胞分裂時には凝縮して太く短いひも状になる」という記述もヒントになりますね。ミトコンドリアでは、酸素を利用して有機物を分解し、生活のためのエネルギーを取り出す呼吸が行われています。よって、答えは①となります。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

まず、輪郭が不規則⇒細胞壁がない、酢酸カーミン溶液で赤くなった球形⇒と予想されることから、試料Aは「ヒトの口腔上皮」の細胞であるとわかります。次に、輪郭がはっきりしている⇒細胞壁がある、緑色の小さな粒上の構造⇒葉緑体と予想できますから、試料Bは「オオカナダモの葉」となります。試料3は核を持たないことから、原核細胞であるとわかりますね。よって答えは⑤の組み合わせとなります。

 

光合成や呼吸のはたらきについて

生物が活動するために行うのがエネルギー代謝です。無機物から有機物を合成する同化(光合成)、有機物を無機物へ分解する異化(呼吸)について理解しておきましょう。ATPのはたらきについては図に書いてきっちり暗記を。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

光合成は、光エネルギーを吸収することでつくられたATPを用いて行われます。植物は葉緑体で光合成を行い、水と二酸化炭素からデンプンなどの有機物と酸素を生成しますね。葉緑体は原核細胞には存在しませんが、シアノバクテリアは光合成を行うことで知られています。よって答えは⑤となります。なお、真核生物の葉緑体は、ひとつの細胞にこのシアノバクテリアが入り込み、共生関係を持つようになったことが起源と言われています。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

呼吸のはたらきに関わる細胞小器官はミトコンドリアです。呼吸とは、酸素と有機物を反応させ、水と二酸化炭素に分解する反応のことで、これにより生命活動のためのエネルギーを取り出しています。よって答えは⑤となります。

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

ATPアデノシン三リン酸)は、アデニンとリボースが結合したアデノシンに、3つのリン酸が直列に結合した構造を持っています。このリン酸どうしの結合にエネルギーが蓄えられているのです(高エネルギーリン酸結合)。ATPが分解され、このリン酸がひとつ取れると、ADPアデノシン二リン酸)ができ、エネルギーが放出されます。また、ADPとリン酸が結合し、ATPが合成されるときは、エネルギーが吸収されます(下図参照)。よって、答えは①となります。

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 【2】大問2 遺伝子とそのはたらき

大問2では、「遺伝子とそのはたらき」について出題されます。特に「DNAの構造について」、「ショウジョウバエの染色体の実験」については過去3年連続で出題されていますので要チェック。過去問題を見ながら、押さえるべきポイントと出題傾向を探っていきましょう。

 

DNAの構造について

DNAはリン酸・糖デオキシリボース・塩基からなる核酸で、その最小単位をヌクレオチドといいます。塩基はアデニン(A)チミン(T)グアニン(G)シトシン(C)の4種類で構成され、この配列によって核酸の種類が決定します。ヌクレオチドと塩基の関係について、しっかりと押さえておきましょう。

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

塩基はアデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)が相補的に結びつきます。DNAは糖とリン酸が交互に結合した鎖状の高分子化合物で、Yの構造を基本に、二重らせん構造を作っていきます。よって、④の組み合わせが正しいとわかるでしょう。

 

(平成26年度第一回試験問題より)

(平成26年度第一回試験問題より)

これは、RNAの構造に関する問題です。RNAのヌクレオチドに含まれる糖はリボースです。図2のeのように、糖にリン酸と塩基がひとつずつ結合しているのが特徴です。よって答えは④となります。なお、RNAの塩基は、DNAの塩基のうち、チミンがウラシルに変わり、アデニンとウラシルが結合します。

 

遺伝子の複製と細胞分裂について

多細胞生物は、体細胞分裂することによって成長します。細胞分裂の仕組みと細胞周期について、基本を押さえておきましょう。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

多細胞生物のからだを構成する細胞は、体細胞分裂を繰り返すことで増えたものです。分裂が行われている分裂期(M期)と、分裂が終わってから次の分裂が始まるまでの間期を含めた一つの周期を細胞周期と呼びます。間期はS期からなり、全く同じ塩基配列を持つDNAがもう一組作られます。そのため、DNA合成期終了時の核内のDNA量は、合成準備期の2倍となります。よって、①の組み合わせが正解となります。細胞周期については、下図のグラフを頭に入れておきましょう。

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(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

体細胞分裂の間期には、母細胞が持つDNAの塩基配列と同じ塩基配列を持つDNAが複製されます。複製されたDNAを含む染色体は、分裂するときに均等に分配されて娘細胞に入ることで同じ遺伝子情報を持ちます。よって、答えは⑤の組み合わせとなります。

 

遺伝子の発現について

DNA中の遺伝子の塩基配列が転写、翻訳され、タンパク質が合成されることを、遺伝子の発現といいます。転写とはDNAの遺伝情報をRNAにコピーする過程のこと。翻訳とは、RNAの塩基配列に基づいてタンパク質をつくることです。複製・転写・翻訳の違いはよく出題されますからきちんと理解しておきましょう。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

細胞分裂を繰り返して増えた細胞がそれぞれ特有の形やはたらきを持つようになることを、細胞の分化といいます。細胞分裂では、どの細胞も同じDNAを持ちますから、原則的に遺伝情報は変化しません。細胞が同じ遺伝情報を持つのに異なる形やはたらきを持つのは、すべての遺伝子が発現しているのではなく、特定の遺伝子が発現しているからです。この特徴を覚えておきましょう。よって、答えは⑥となります。

 

だ腺染色体の観察について

ショウジョウバエの幼虫のだ腺染色体を観察する実験は、かなりの頻度で出題されています。これは、ハエやユスリカに見られるだ腺染色体を利用し、DNAとRNAを染め分けすることで、パフでのRNA転写が盛んであることを証明する実験です。問われる内容は毎年ほぼ同じですから、過去問題でしっかりと対策を。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

メチルグリーンはDNAを青~青緑色に、ピロニンはRNAを赤桃色に染色します。パフが赤みを帯びたということから、この部分にはRNAが多く存在していることがわかります。よって、パフではDNAの塩基配列を写しとる転写が行われ、mRNA伝令RNA)が盛んに合成されているとわかるでしょう。よって、答えは①であるとわかります。

 

(平成26年度第一回試験問題より)

(平成26年度第一回試験問題より)

だ腺染色体を染色すると、しま模様があらわれますが、突然変異が起こった場合、このしま模様に変化が見られることがあります。この変化を調べることによって、染色体上の遺伝子の位置を知ることができます。また、だ腺染色体のふくらんでいる部分(パフ)では、二重らせんがほどけ、DNAの塩基配列がmRNAに転写されていますから、答えは③となりますね。

 

【3】大問3 生物の体内環境の維持

大問3では、「生物の体内環境の維持」について出題されます。「ヒトの体液」や「腎臓のはたらき」、「体の免疫」に関する問題は頻繁に出題されていますので要注意。また、血液成分やホルモンの名称は押さえておきましょう。では、実際の過去問題を見ながら、出題傾向を探っていきましょう。

 

ヒトの体液について

ヒトの体液は血液・組織液・リンパ液でできています。それぞれの体液の性質と役割について頭に入れておきましょう。また、血液の成分やはたらきは必ず暗記を。似たようなワードが多いので、混同しないように注意しましょう。

 

<血液の成分とはたらき>

固体成分 赤血球 ヘモグロビンを含み、酸素を運搬するはたらきをもつ
白血球 アメーバ運動をし、細菌などを食作用によって破壊する
血小板 血液を凝固させるはたらきをもつ
液体成分 血しょう 二酸化炭素を運搬する
(平成26年度第一回試験問題より)

(平成26年度第一回試験問題より)

肝門脈は小腸に分布する毛細血管が集まって太くなった血管で、小腸を通過後に肝臓へ向かう血液が通る場所です。よって誤っているのは⑤の肝門脈です。リンパ液が血液に合流するのは鎖骨下静脈ですね。肝門脈がわからなくても、その他の選択肢が正しいとわかれば解ける問題でしょう。

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

動物の体の中の細胞を取り囲んでいる液体を体液といい、ほとんどの細胞は体液のおかげで体外環境と直接に接することはありません。そのため体外環境の変化は緩和され、塩類濃度・酸素濃度・血糖濃度・pH・体温などの体内環境はほぼ一定に保たれます。これを恒常性(ホメオスタシス)といいます。よって、答えは④となります。

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

まず、ヘモグロビン血しょうの成分ではなく、赤血球に含まれる色素ですから①は誤り。グルコースや尿素は、血液の液体成分である血しょうに溶けて運搬されますから、②と③も誤りです。よって正解は④となります。ホルモンは特定の内分泌腺で作られ、血液中に分泌されて特定の器官まで運搬されます。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

血液の有形成分のうち、ヘモグロビンを含み酸素を運ぶはたらきをもっているのは赤血球ですね。図1の凝固した部分を血ぺいといいます。これは、血しょう中にできるフィブリンという繊維状のタンパク質が赤血球や白血球などの有形成分とからみ合ってできたものです。よって答えは④の組み合わせとなります。

 

肝臓のはたらきについて

肝臓は代謝において最も重要なはたらきをする器官です。「腎臓」に比べ出題頻度は低めですが、平成28年度には第一回・第二回ともに、肝臓についての問題が出題されています。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

肝臓は、血液中のグルコースの一部をグリコーゲンに変えて貯蔵します。よって③が誤り。グリコーゲンは血液中の糖濃度が低くなると分解されてグルコースになり、血液中に供給されます。

 

(平成28年度第二回試験問題より)

(平成28年度第二回試験問題より)

肝臓は人体のなかでも最も大きな内臓です。肝臓の場所はXですね。肝臓では胆汁がつくられ、胆のうから十二指腸に分泌されます。また肝臓には解毒作用があり、アルコールをアセトアルデヒドに分解し、水と二酸化炭素へと変えるはたらきがあります。よって正解は③の組み合わせとなります。

 

腎臓のはたらきについて

体内の老廃物を除去して尿をつくるなど、体液の濃度を一定に保つことで体内環境の維持に貢献している腎臓。腎臓のはたらきや各名称は必ず押さえておきましょう。図やイラストと共に覚えるのがオススメです。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

血糖濃度が低下すると、間脳視床下部がこの情報を受け取り、交感神経を通じて副腎髄質からアドレナリンの分泌を促します。活動的な時に使われるのが交感神経、安静時・リラックス時に使われるのが副交感神経と覚えましょう。アドレナリンは、肝臓などでグリコーゲンの分解を促進し、血糖濃度を上昇させます。よって正解は①の組み合わせとなります。なお、チロキシンは甲状腺から分泌されるホルモンです。

 

(平成26年度第一回試験問題より)

(平成26年度第一回試験問題より)

腎臓には、肝臓でつくられた尿素やその他の老廃物を血液中からろ過して取り出し、尿として排出するはたらきがあります。毛細血管が糸玉状になった糸球体とそれを包むボーマン嚢からなる腎小体マルピーギ小体)では、血液中の血球やタンパク質以外の成分(グルコースや無機塩類、尿素、水など)を糸球体からボーマン嚢へとろ過し、原尿をつくっています。腎小体と細尿管はネフロン(腎単位)と呼ばれ、ネフロンが多く存在するは腎臓の皮質部分です。よって答えは①の組み合わせとなります。なお、bは腎う、cは輸尿管です。

 

ホルモンのはたらきについて

内分泌腺から血液中に分泌されるホルモンは、特定の器官・組織の活動を調整します。下表内のホルモンについては、名称とはたらきを暗記しておきましょう。

 

<おもなホルモンのはたらき>

脳下垂体 前葉 成長ホルモン 骨や筋肉の発育。成長を促進
甲状腺刺激ホルモン 甲状腺からのホルモン分泌を促進
副腎皮質刺激ホルモン 副腎皮質からの糖質コルチコイドの分泌を促進
後葉 バソプレシン 腎細管での水分の再吸収を促進
甲状腺 チロキシン 代謝を進め、成長と分化を促進
副甲状腺 パラトルモン 血液中のCa2+量を調整
副腎 皮質 鉱質コルチコイド 腎細管でのNaの再吸収を促進
糖質コルチコイド 血糖量増加(タンパク質の糖化)
髄質 アドレナリン 血糖量増加(グリコーゲン⇒グルコース)
すい臓 A細胞 グルカゴン 血糖量増加(グリコーゲン⇒グルコース)
B細胞 インスリン 血糖量低下(グルコース⇒グリコーゲン)

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

上昇した血糖濃度を低下させるのは、すい臓のランゲルハンス島のB細胞から分泌されるインスリンですね。血糖濃度は、自律神経とホルモンが共同的にはたらくことで調節されます。血糖濃度が高くなると視床下部が刺激され、副交感神経を経てすい臓のランゲルハンス島のB細胞に伝えられることでインスリンが分泌されるのです。糖尿病になるとこれが正常に分泌されず、血糖濃度が正常な値まで下がらなくなります。よって、⑤が正しい組み合わせとなります。

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

甲状腺刺激ホルモンは脳下垂体前葉から分泌されるホルモンです。チロキシンの濃度が上昇すると、甲状腺を刺激するホルモンの分泌が抑制され、チロキシンの分泌も低下します。このように、最終的に得られた結果がはじめの段階に影響を及ぼすしくみをフィードバックといいます。よって、答えは③の組み合わせとなります。

 

免疫について

体内に侵入した異物を排除するシステムを、免疫といいます。免疫には自然免疫獲得免疫の二つがあり、それぞれ細胞や抗原を排除するしくみが異なります。免疫の過程やしくみについての問題は毎年出題されていますので、しっかりと頭に入れておきましょう。

<免疫のしくみ>

自然免疫 好中球、マクロファージ、樹状細胞 食作用
NK細胞 感染した細胞を破壊
獲得免疫 体液性免疫 樹状細胞、ヘルパーT細胞、B細胞 樹状細胞がヘルパーT細胞に抗原提示⇒B細胞が抗体生産細胞に分化
細胞性免疫 樹状細胞、ヘルパーT細胞、キラーT細胞 樹状細胞がヘルパーT細胞に抗原提示⇒キラーT細胞が細胞を排除

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染によりヘルパーT細胞が破壊され、免疫機能が正常にはたらかなくなる病気はエイズ(AIDS、後天性免疫不全症候群)です。よって、③が正しい組み合わせとなります。なお、アレルギーは炎症やじんましんなどの過敏な免疫反応が起こる現象です。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

体内に侵入した抗原は、まず樹状細胞によって認識され、食作用によって分解されます。それにより、抗原の情報がヘルパーT細胞へと伝えられ、ヘルパーT細胞は自身が増殖すると同時に、B細胞キラーT細胞を活性化させます。B細胞は抗体生産細胞となり大量の抗体を生産・放出し、キラーT細胞は感染細胞を直接攻撃します。よって、③の組み合わせが正しいとわかります。免疫の過程を頭に入れておけば解ける問題ですね。

 

【4】大問4 植生の多様性と分布

大問4では、「植生の多様性と分布」について出題されます。「森林の階層構造について」、「植生の遷移について」、「バイオームについて」の各分野から出題され、平成26年度以降、毎回ほぼ同じ構成となっています。過去問題を見ながら、押さえるべきポイントを見ていきましょう。

 

森林の階層構造について

森林の階層構造と相対照度との関係についてしっかりと理解しておきましょう。下のようなイラストと合わせて覚えるのがオススメです。また、平成28年度の第二回試験では、土壌層位の構造についても出題されました。こちらも押さえておきましょう。

※平成27年度第一回試験問題を用いて作成

※平成27年度第一回試験問題を用いて作成

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

発達した森林で見られる、植物の高さによって生じる層状の構造を階層構造といいます。図1のアは最も背の高い樹木の集まりからなる階層ですから、高木層ですね。このような構造の森林では、高木層の中~下部までは比較的光が届きますが、亜高木層以下には届きにくいのが特徴です。森林内の光の強さの変化を表したグラフはaですね。よって、答えは①となります。

 

(平成28年度第二回試験問題より)

(平成28年度第二回試験問題より)

土壌の断面はいくつもの層からなっており、上から、落葉層→腐植層→岩石(母材)が風化した層→母岩の層と続きます。有機物の分解速度が遅い地域では腐植層は厚くなり、速い地域では薄くなります。また、細かい岩石と腐植質がまとまって粒状になったものを団粒構造といい、保水力が高く通気性が良いため、植物が育ちやすいのが特徴です。よって、①が正解となります。

 

植生の遷移について

ある場所に生育している植物の集まりを植生といいます。植生の遷移には、一次遷移二次遷移があり、一次遷移は乾性遷移湿性遷移に分かれます。それぞれの違いや特徴について押さえておきましょう。

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

さまざまな環境から植生の構成種や相観が移り変わっていくことを遷移といい、植生を構成する植物相がほぼ一定となって安定した状態を極相(クライマックス)といいます。よって、イに当てはまるのは「それ以上は全体として大きな変化を示さない」となります。よく発達した森林の地表部では、落ち葉や枯死した植物体が微生物のはたらきで分解され、腐植質と呼ばれる黒褐色の有機物に変化します。これらから、答えは②の組み合わせであるとわかるでしょう。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

遷移のうち、土壌や種子などが無い場所で始まるものを一次遷移といい、土壌がすでに形成されていて、土の中に有機物や種子、地下茎などが残っている場所で始まるものを二次遷移といいます。相観とは、植生全体を外から眺めたときの外観を指した言葉です。よって、答えは④の組み合わせとなります。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

二次遷移は、土壌がすでに形成された場所で始まりますから、山火事の跡地、森林伐採の跡地、耕作を放棄した場所などがあてはまるでしょう。湖沼が土砂で埋まった土地や溶岩台地には、有機物などの養分や種子が存在しません。このような土地で始まるのは一次遷移ですね。よって答えは③となります。

 

(平成28年度第二回試験問題より)

(平成28年度第二回試験問題より)

乾性遷移は陸地から、湿性遷移は湖沼から始まります。その後、草原(イタドリやススキ)→低木林(ウツギやヤシャブシ)→陽樹林(アカマツやコナラ)→混交林陰樹林(シイやカシ)の順番で遷移します。この順番は暗記しておきましょう。これらより、③の組み合わせが正解となります。

 

バイオームについて

ある地域に生息している生物の集まりをバイオーム(生物群系)といいます。下図は気温と降水量により、各地域でどのような植生が極相となるかを定義したものです。この分布図は問題にも頻繁に登場しますからしっかりと暗記を。また、日本のバイオームについての水平分布・垂直分布についても押さえておくようにしましょう。

※平成28年度第一回試験問題を用いて作成

※平成28年度第一回試験問題を用いて作成

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

ゆうきさんが調査している土地は、ブナやミズナラなどの落葉広葉樹が多く見られ、比較的寒冷な土地であることから、Jの夏緑樹林が発達した地域であると予測できます。また、ななこさんの調査している土地は熱帯で乾季が長く、年間降水量が少ないこと、アカシアなどの低木がまばらに生えていることなどから、Nのサバンナが発達した地域と予測できます。よって答えは⑥の組み合わせとなります。それぞれの地域の特色を押さえておけば解ける問題です。

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

緯度の違いによって生じる水平方向のバイオームの分布を水平分布といいます。北海道東北部には針葉樹林(トドマツ、エゾマツなど)、北海道南部から東北地方にかけては夏緑樹林(ブナ、ミズナラなど)、関東地方から屋久島では照葉樹林(シイ類、カシ類、クスノキなど)、屋久島より南では亜熱帯雨林(ヘゴ、アコウ、ガジュマルなど)と、日本にはさまざまなバイオームが分布しています。正解は③ですね。バイオームと植物種の組み合わせを暗記しているかどうかがポイントとなるでしょう。

 

(平成28年度第二回試験問題より)

(平成28年度第二回試験問題より)

標高の違いによって生じる垂直方向のバイオームの分布を垂直分布といいます。気温の変化にしたがって、丘陵帯には照葉樹林(スダジイ、アラカシなど)、山地帯には夏緑樹林(ブナ、ミズナラなど)、亜高山帯には針葉樹林(シラビソ、コメツガなど)、高山帯には高山草原(ハイマツ、コケモモ、コマクサなど)が分布しています。Bは亜高山帯ですからバイオーム名は針葉樹林ですね。Cは山地帯ですから、夏緑樹林のブナやミズナラがあてはまります。よって答えは⑤となります。

 

【5】大問5 生態系とその保全

 

大問5は、「生態系とその保全」がテーマとなっています。「生態系とバランス」、「生態系内のエネルギーや物質の循環」、「人類による生態系への影響」について押さえておきましょう。実際の過去問題を見ながら、ポイントと出題傾向を探っていきましょう。

 

生態系とバランス

生態系とは、特定の地域に生息する生物集団(植物・動物)と非生物的環境(光・温度・水・大気・土壌など)がつくる環境の事です。生態系内での生物の役割や、食物連鎖のしくみ、生態系のバランスを保つキーストーン種について押さえておきましょう。

 

(平成26年度第一回試験問題より)

(平成26年度第一回試験問題より)

ヒトデに捕食されていた動物のうち、その個体数が多いフジツボとイガイは、ヒトデがいなくなったことで個体数が著しく増加すると予想できます。また、食物を失ったヒザラガイやカサガイがいなくなったという記述から、姿を消したのは紅藻であると予想できますね。ヒトデを除去しなかった対照区ではこのような変化が見られなかったことから、上位の捕食者であるヒトデの存在が、生態系を構成する種の多様性を維持しているとわかります。よって、答えは④の組み合わせとなります。なお、ヒトデのようにある一定の生態系でのバランス保持に重要な役割を果たしている生物をキーストーン種といいます。

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

生態系には、光や水などの無機的な環境も含まれますから、①は誤りです。生態系の安定は、それを構成する生物種が多いほど保たれやすいため、②も誤り。また、人間も生態系を構成する一部であり、人間の存在が生態系に及ぼす影響は極めて大きいと言えます。よって③も誤り。人為的に外来生物を導入すると、在来種が絶滅に追い込まれるケースがあります。生態系に悪影響を及ぼすことから、④も誤りです。よって、⑤が正しい内容であるとわかるでしょう。

 

(平成26年度第二回試験問題より)

(平成26年度第二回試験問題より)

生態系内での生物の役割は3つあります。無機物から有機物を合成できる生産者、生産者が合成した有機物を消費する消費者、生物の枯死体や遺骸などの分解を行う分解者です。これらから、答えは②の組み合わせとなります。なお、植食性動物を一次消費者、植食性動物を食べる肉食性動物を二次消費者、その肉食性動物を食べる肉食性動物を三次消費者といいます。

 

エネルギーの流れと物質循環

生態系内でのエネルギーの流れや、物質の循環について押さえておきましょう。炭素や窒素などの物質は生態系内を常に循環し、総量はほぼ一定に保たれています。それぞれ、模式図などで覚えておくとわかりやすいでしょう。

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

太陽から届くエネルギーは光エネルギーです。植物は光を使って光合成を行って有機物を合成し、光エネルギーを化学エネルギーへと変換します。よって、生産者から消費者や分解者へと流れるCエネルギーは化学エネルギーであるとわかります。また、全ての生物から出ているエネルギーは、有機物に含まれる化学エネルギーが熱エネルギーとして放出されたものです。よって、①の組み合わせが正しいとわかります。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

これは、炭素の循環に関する問題です。炭素は、二酸化炭素や有機物の形で生態系内を循環しています。図1のウのように、植物が大気中の二酸化炭素を取り込む現象は光合成ですね。また、エのように、化石燃料から大気中へ二酸化炭素が放出される現象は燃焼です。よって、答えは④となります。上図に補足し、炭素の循環のしくみをあらわしたのが下図です。きちんと頭に入れておきましょう。

※平成28年度第一回試験問題を用いて作成

※平成28年度第一回試験問題を用いて作成

 

(平成27年度第一回試験問題より)

(平成27年度第一回試験問題より)

これは、窒素の循環に関する問題です。窒素は、大気中に約80%含まれていますが、植物をはじめ多くの生物はそれを直接利用することができません。大気中の窒素は、アゾトバクターやマメ科植物の根に共生する根粒菌などの窒素固定細菌により、植物が利用できる窒素化合物に変えられます。これを窒素固定といいます。よって、正解は⑤となります。

 

人類による生態系への影響

人間の活動は生態系に多くの影響を及ぼしています。地球温暖化や水質汚染、富栄養化、生物濃縮、外来生物など、生態系を取り巻くさまざまな環境問題について理解しておきましょう。

 

(平成28年度第一回試験問題より)

(平成28年度第一回試験問題より)

有機物を豊富に含んだ汚水が海や湖、河川などに流入することで水中の栄養塩類濃度が上昇し、プランクトンが異常増殖する現象を富栄養化といいます。栄養塩類は、植物が利用する肥料の成分である窒素化合物リンなどの無機化合物で、人間活動によって排出された生活排水や工場耕水などにも含まれます。よって、答えは①の組み合わせとなります。なお、富栄養化により海面が赤褐色に変化する現象を赤潮、河川や湖沼の水面が青緑色に変化することを水の華(アオコ)といいます。

 

(平成26年度第一回試験問題より)

(平成26年度第一回試験問題より)

大気中の二酸化炭素濃度が増加している原因は、産業革命以降の化石燃料の大量消費によるものと考えられています。また、二酸化炭素は、太陽の光と熱を通過させ、地面の放射熱を吸収する性質があります。そのため、二酸化炭素濃度の上昇は地球の温暖化へとつながるのです。よって、答えは③の組み合わせとなります。なお、図1のグラフが小刻みに上下しているのは季節によって植物の光合成量が変化し、大気中の二酸化炭素の吸収量が変化するためです。

 

(平成26年度第一回試験問題より)

(平成26年度第一回試験問題より)

これは、生物濃縮に関する問題です。表1より、それぞれの濃縮の割合を計算してみましょう。

<一次消費者→二次消費者>27÷1=27より、約27倍

<二次消費者→三次消費者>38÷27=1.40…より、約1.4倍

<三次消費者→四次消費者>2056÷38=54.1…より、約54倍

これらの結果より、イルカ類(四次消費者)と小型の魚類(二次消費者)を比べると、イルカ類の方がPCBを濃縮しやすいことがわかりますから①は誤り。濃縮の割合は消費者によってそれぞれ異なりますから、②と③も誤りです。PCBが生物体中に高濃度に濃縮されるのは、体外に排出されにくい物質であるためです。よって、⑤も誤りです。二次消費者のPCB濃度と表層水を比べると、27÷0.00015=180000(倍)となりますから、④の内容が正しいとわかります。

 

(平成28年度第二回試験問題より)

(平成28年度第二回試験問題より)

人間によって本来の生息地から別の場所へ持ち込まれた生物を外来生物といいます。生態系に大きな影響を及ぼす生物は特定外来生物に指定され、飼育や輸入、移動が禁止されています。外来生物は、もともとそこに生息していた在来種や在来種の餌となる生き物を捕食し、生活の場を奪うことで生態系のバランスを崩します。よって、正解は②となります。

 

3.「生物基礎」を攻略する三つのポイント

 

【その一】広く浅く!重要単語をどれだけ押さえるかがカギ

とにかく知識量がものをいう、高卒認定試験の生物基礎。考察問題は数問程度で、ほとんどが暗記問題となっています。そのぶん教科書の重要ワードをさらうような基礎的な内容が多く、変化球問題はあまり見られません。範囲全体を“広く浅く”勉強するのがポイントです。

 

【その二】勉強範囲を絞るのも手

「暗記力には自信がない…」という人は、思い切って勉強する範囲を絞ってみては?大問は各20点ですから、5分野中、2~3分野に絞って重点的に勉強すれば合格点に届くでしょう。なかでも、暗記する量が比較的少なく、内容も理解しやすい「生態系とその保全」の分野は必ず押さえておきましょう。

 

【その三】ケアレスミスに要注意!まぎらわしい選択肢も

生物基礎の選択肢は、「語句の正しい組み合わせ」を選ぶものが多く、選択肢の数も多いため、マークシートのケアレスミスに注意が必要です。また、選択肢には似たような単語や文章が並んでいますから、焦らずに一問一問確実に解答番号を選んでいきましょう。

 

まとめ

高卒認定試験の生物基礎では、膨大な知識量が求められます。とはいえ単語帳などでただ暗記していても内容はなかなか頭に入らないもの。イラストや図解を見ながら、興味を持って取り組むことが大切です。「なぜお腹がいっぱいになると眠くなるのか」、「なぜ緊張すると鼓動が速くなるのか」など、身近な“なぜ”から解明してみるのも面白いですね。

 
 

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