不登校の原因にはどんなものがある?
子どもが不登校になる原因にはどんなものがあるのでしょうか?小学生・中学生・高校生で原因に違いはあるのでしょうか?ここでは不登校の原因と対応について解説していきます。
目次
データで見る不登校に関する現状
不登校と聞いて、漠然と「学校に行かない状態」と思っている方は非常に多いのではないでしょうか。実は現在、不登校には明確な定義がなく、専門家や調査機関、教育関係者の間でも「不登校の定義」に関してはあいまいなままです。
一般に不登校には2つの意味があります。
- 学籍がなく、登校しない状態のこと。(非就学者も参照。過年度生(受験浪人)や就学義務猶予免除対象者なども含まれる。)
- 学籍がある人が、登校しない状態のこと。欠席・長期欠席も参照。休学や停学、出席停止なども含まれる。
の2つです。このうち2の一部が政府の示す「不登校 (理由別長期欠席者数)」にあたります
現在、日本に「不登校」の状態にある子どもの人数、割合は
中学校:97,033(1.7%)
小学校・中学校合計:1,228,797(2.7%)
にも上るとされます。(平成26年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」)
学年ごとに見ると、小学校では小学6年生の不登校児童数が最も多く、中学校では中学3年生の不登校生徒数が最も多くなっています。学年ごとに差はあるものの、全体的には男子児童・男子生徒のほうが不登校になっている子どもの数が多くなっているのも特徴です。
高校生の不登校に関しては、文部科学省による調査は行われていないため、その実態数の把握が困難です。
現在は、不登校の生徒の追跡調査も行われています。文部科学省による調査では、不登校生徒だった人の18.1%が仕事に就いておらず学校にも通っていないという結果が出ています。また仕事に就いている人も、その32.2%がパートやアルバイトなどの非正規雇用です。
以前に比べて大学・短大・高専への就学している割合は大幅に上昇し、就学も就業もしていない割合は減少していますが、不登校の経験が将来に暗い影を落とすものであることは否めないでしょう。
不登校になる原因にはどんなものがあるのか
- 不安など情緒的混乱……36.1 %
- 無気力……23.0 %
- 親子関係をめぐる問題……19.1 %
- 不安など情緒的混乱……28.1 %
- 無気力……26.7 %
- いじめを除く友人関係をめぐる問題……15.4 %
と、人間関係が原因の不登校が増えてくるのです。
「いじめ」が原因で不登校になっている生徒数も1,047 人と大きく増えていますが、全体に占める割合は1.1 %と小学生と大きな差はありません。小学生の場合、生活環境の急激な変化に馴じめず、適応障害を起こしてしまうことが不登校の引き金となることもあるようです。
一方で中学生の場合は学業不振や親子関係の問題、非行が不登校の原因になることが考えられます。
高校生の場合は、さまざまな理由で不登校になるケースが報告されています。特に多い理由が次の3つです。
- 無気力……30.9%
- 不安など情緒的混乱……18.0%
- あそび・非行……10.4%
高校生になると、どのような理由であっても、不登校になることによって留年や退学といったことが想定されます。そのため、小学生・中学生のケースよりも早め早めに対応する必要が出てきます。不登校を放置しておくと学習の機会が失われ、それにより進路や就職の選択の幅が狭まることも容易に考えられます。
必要な時に必要な対応を、子ども一人ひとりに合わせて行うことで、不登校だったことで将来に生じる様々な問題を解決しやすくできるので、不登校の子どもをもつ親は一人で抱え込まず学校や専門機関と連携することが重要だと言えるでしょう。
不登校の原因と対応
不登校の原因を作らないために大人ができることはあるのでしょうか。ここでは主な原因に対して大人が対応すべきことや、子ども自身が気を付けることをお話します。
いじめが原因の場合
不登校の原因のなかでも、一刻も早く適切な対応を取らなければならないのが「いじめ」です。もし、いじめが不登校の原因になっているようであれば、子どもだけに対処させず大人が適切なサポートをすることで不登校を未然に防ぐことが可能です。
いじめに遭うと、子どもは心身ともに大きなダメージを受けます。学校に行かないことで自分の身を守っている場合も少なくありません。それを無理に登校させたところで、傷は深くなるばかりです。ひどい場合はうつ病などの精神疾患や最悪の場合自殺といった結果を招きます。
いじめが不登校の原因にある場合は、親と学校が連携することはもちろん、必要な時は警察などとも連携して、対処してください。いじめは紛れもない犯罪です。いじめを放置することは、子どもの未来を壊すことと同じことだと肝に命じましょう。子ども自身も、大人に対して早めにSOSを出すことが重要です。
「いじめられる方にも原因がある」などと言う大人もいますが、どんなに原因があろうといじめは許される行為ではありません。被害者が泣き寝入りをする必要はないのです。学校側もいじめの相談を受けた場合は、しっかりとした対応を取る必要があります。加害者をかばうことは最低最悪の対処です。また、親や被害を受けた生徒から相談があったなどとは口が裂けても言ってはいけません。いじめをエスカレートさせます。
人間関係が原因の場合
人間関係が原因の場合は、しっかり子どもと話し合い、大人としてどうすべきかをさりげなく示すことが効果的でしょう。
子どもはまだまだ未熟な存在です。大人としてできることは、子どもの人間関係に深入りしてあれこれと口出しすることではなく、子どもの立場に立ってアドバイスをすることではないでしょうか。
この場合、大人が対応を誤るといじめに発展することがあるので注意が必要です。
体の調子が悪い場合
体の調子が悪いために不登校になっている場合は、学校や医療機関との連携が必要不可欠です。
特に子どもの場合、自分の心の不安や緊張が体調に出てきたとしても、上手く言葉にできないことが少なくありません。そのため、朝になると決まってお腹が痛くなるとか頭が痛くなるといった症状を「気のせい」とか「わがまま」と一蹴してしまう大人も珍しくないのです。まず、子どもが具合が悪いと訴えたら、きちんと医療機関を受診し、原因を突き止めましょう。必要ならば詳しい検査を受けるのも大切です。
情緒が不安定な子どもの場合は、スクールカウンセラーとの面談を行うことで安定する場合もあります。もし、どうしても教室で過ごすのが難しい場合は別室登校や保健室登校を検討しても良いでしょう。
情緒が不安定なために不登校になっている場合
情緒が不安定なために不登校になっているようなときは、一度精神科の診察を受けられることをおすすめします。
精神科というと「ウチの子はおかしくなんてない!!」とお怒りになる保護者の方もいらっしゃいますが、早めに適切な対処をすることで子どもも親もラクになることが非常に多いです。
特に、進学やクラス替えといった、新しい環境に変わった直後や思春期などはただでさえ心が敏感になっているため、心を病んでしまう子どもも少なくありません。もし涙もろくなったとか、表情が暗いといった様子が続いているようなときは、ぜひ親の方から「最近はどう?」などと声掛けをするようにしましょう。
心の病は、放置するとこじらせてしまうことが少なくありません。結果として10年単位で治療に時間を要したりすることもあります。子ども自身も、眠れないとか動悸がする、立ち上がったときにめまいがするといった症状がある場合は、できるだけ早くに大人にSOSを出しましょう。
最近では、人間関係の複雑化に伴い、小学生でもうつ病を発症することが確認されています。うつ病以外の心の病が不登校の原因となっていることもありますので、「心が弱いからだ」とか「わがままだ」などと決めつけず、子どもの話をよく聞いて、できるだけ早く専門機関と連携を取るようにしてください。
無気力が原因の場合
無気力が不登校の原因となっている場合、「両親の離婚」や「長年の厳しすぎるしつけ」「挫折や失敗を繰り返したことによるあきらめ」といったものが根底にある場合が珍しくありません。
「両親の離婚」や、「親からの厳しすぎるしつけ」が原因の場合、子どもと親との関係を一から見直す必要があります。しかし、これを家庭内だけで行うのはおすすめしません。親と子の関係を客観的に見て、親にも子にもアドバイスを行える第三者の介入を求めてください。スクールカウンセラーなど、専門の知識を持っている人が望ましいでしょう。
「挫折や失敗を繰り返したことによるあきらめ」が根底にある場合は、とにかく成功体験を積ませ、小さなことでも大袈裟なぐらいほめ、子どもに自信を付けることを優先してください。「こんなこともできないなんて」「これぐらいできて当たり前だ」といった言葉で、子どもは「自分はなんてダメな人間なんだろう」と思い込んでしまっています。そこから立ち直るには、「自分はやればできる!」「自分にも良い所はある!」という気持ちを育てるしかありません。できないことを数えるのではなく、できたことに目を向け、それを喜ぶということを徹底することで、時間はかかるかもしれませんが少しずつ気持ちが前向きになっていきます。
もし「学校に行こうかな」という気持ちになったときは、実際行ったかどうかはともかく「行こうという気持ちになった」部分をほめてください。
往々にして、子どもの自信の喪失は、親の過度な期待による厳しいしつけが原因となっています。子どもが自信を失い、「自分はなんてダメな人間なんだろう」と落ち込んでいる時は励ましたり、強い言葉を掛けるのではなく、一度親自身の対応も振り返ってみましょう。
不登校となる原因は様々ですが、年齢によって何が原因になりやすいかには差があります。ただし、いずれの場合も親と子どもだけで抱え込まず、周囲とのつながりを持ち続けることが不登校解消には大変重要です。
不登校への公的支援に関して、こちらの記事(不登校に対する公的機関のサポートとその利用方法とは?)でも詳しく解説しています。
まとめ
子どもが不登校になると、親は必要以上に自分を責めてしまいがちです。そして、はれものを触るような対応を子どもにしてしまいがちです。
しかし、それでは事態は良くなりません。きちんと親と子どもが向かい合い、よく話し合うことが重要です。子どもも「ほうっておいてほしい」とか「親なんてうっとうしい」と思わず、一度自分が考えていることを思い切りぶつけてみましょう。