中学の不登校を乗り越え、高校・大学に進学した我が子の実体験!
中学校で不登校になってしまうと、その先の進路はどうなるの?漫画家・青木光恵さんは、不登校となった娘さんを全力でサポートすることを決意。数々の困難・逆境を乗り越え、無事に娘さんが大学に進学するまでの様子をコミックエッセイ2冊に渡って描いています。
目次
エッセイ漫画家・青木光恵さんと娘のちゅんこさんインタビュー(後編)
【プロフィール】
青木光恵さん
1969年生まれ、兵庫県尼崎市出身。1988年頃に漫画家としてデビュー。「中学なんていらない。」(KADOKAWA メディアファクトリー)、「不登校の17歳。」(KADOKAWA)の2冊に渡り、中学2年でいじめに遭い、不登校になってしまった娘の様子、その後の進路についてなど、波乱万丈な子育ての日々をコミックエッセイとして発表。
娘・ちゅんこさん
1997年生まれ。いじめが原因で中学2年で完全不登校に。体調不良、不登校で内申点がもらえず成績がオール1、という逆境を乗り越えてなんとか第一志望の公立高校に進学してめでたく卒業。2016年4月より大学に進学し、現在は女子大生としての生活を満喫中。
【漫画】
中2の夏、いじめが原因で完全不登校になってしまった作者の娘・ちゅんこ。体調不良、成績はオール1、といった数々の逆境の中、家族はそれぞれが葛藤しながらも娘の明るい将来のために一致団結。中学校に通わず、塾の助けを借りて志望する高校を受験、合格するまでの日々を描く。
中学時代の不登校を乗り越え、なんとか第一志望の公立高校への合格を果たした作者の娘・ちゅんこ。しかし高校の荒れた雰囲気に馴染めない上、またしてもいじめ問題が勃発し、再び不登校の危機が訪れる……!思春期真っ只中の娘の成長ぶり、進学するための学費問題、大学入試についてなどを描いた青木光恵の「不登校」コミックエッセイシリーズ第2弾。
高校生活で再び不登校になるも、アルバイトを始めるなど成長を感じる日々!
「通信制高校ガイド」では、漫画家・青木光恵さんと娘のちゅんこさんに行なったインタビューの模様を前編・後編の2回に分けてお送りします。
※インタビュー(前編)(我が子の不登校、漫画家・青木光恵さんはどのように乗り越えた?)
前編となる第1回目は、いじめが原因で不登校となってしまった中学校時代の生活について語っていただきました。第2回目では、中学校卒業後に進学した高校・大学での生活を中心にお話を伺っています。
――中学校を卒業後、第一志望である公立高校に合格して入学しますが、学校の雰囲気に馴染めなかったりまたいじめにあったりして、再び不登校となってしまいます。漫画の中で「休学・退学も留年もしたくない」とおっしゃってましたが、この時の心境は?
ちゅんこさん:せっかく入学したんだから、卒業という結果を残したかったんです。そうじゃないといろいろなことが無駄になっちゃうので……。
――高校時代、ちゅんこさんがアルバイトを始められたのも大きな変化のひとつだと思います。こちらは休まずに通えていたようですが、その理由は何でしょうか?
ちゅんこさん:学校だと私が休んでも別に誰かが困るわけではないですけど、アルバイトは休むと他の人に迷惑がかかっちゃうので、本当に体調が悪い時以外は休みませんでした。あとはやっぱりお金を稼ぎたかったので。
青木さん:私も遅刻したり、体調不良でドタキャンしたり、スケジュールの管理ができないかと思ってたんですが、驚くほどバイトはちゃんと行けていました。
――仕事での責任感はかなり感じていたんですね。
青木さん:私がアシスタントさんなど人を使う仕事をしていたので、遅刻されるとどれだけ周りに迷惑をかけるか、雇う側も注意するのはどれほど気が重いか、という話はよくしていたので、その影響かもしれません。
――アルバイトを始めたことで社会性や責任感が芽生えているのは安心ですし、それ以前にちゅんこさんは人との係わり合いを完全にシャットアウトして孤立する、という心配はなさそうですね。
青木さん:話下手ですけど、人との係わり合いが苦手というのではないです。
――ちょうど一年ほど前に高校を卒業したわけですが、当時の気持ちは覚えていますか?
ちゅんこさん:一年前とは思えないくらい、遠い昔のように感じますね……。
青木さん:卒業式に行ってないよね。
――中学・高校とも卒業式は欠席されたんですね。ちゅんこさんが高校を卒業した時の青木さんの心境はいかがでしたでしょうか?
青木さん:やっぱりその時点では大学に通えるかどうかもわからなかったし、お金の心配もあったので、手放しで「良かった良かった」というのではなかったですね。だから「終わったー」という気持ちはまったくなかったですし、今もまだないです。
ちゅんこさん:逆にいつになったら「終わった」と思うの?
青木さん:家を出た時じゃない?自活とか就職できた時、未成年ではなくなる20歳を迎えた時にはちょっと思うかも。たとえフリーターでも、自分で稼いで家にお金を入れたり、奨学金を返せるようになればいいんです。例えば私がいなくなってもなんとか自活できるようになっていれば、やっと「子育て終わったー」と思えるかな。
とにかく次は「大学不登校」や「就職できない」という漫画を描かずに済むようにしたい(笑)。
「教室」や「クラス」の概念がないから通いやすい?大学生活を満喫中
――高3で進路について考えた時に、大学進学を希望した理由などはあったのでしょうか?
ちゅんこさん:大学に進学したいと思ったのは、中学・高校は全然通えなかったのでまだ学生生活を楽しみたかったっていうのが一番大きいですね。
青木さん:AO入試で夏休み中にさらっと進学が決まったのでドラマチックな展開にはならなかったけど、少子化で入学しやすいのは本当に助かりました。
――高校卒業後の進学先で専門学校という選択肢はありませんでしたか?
ちゅんこさん:……なかったですね。絵を描くのは好きなんですけど、専門的に学校で学んだり仕事となると楽しめないかなと思って。
時代もあるだろうけど、うちのお母さんの場合はたまたまうまくいったと思ってて。同人誌で見て貰ってそこからデビューして、かれこれ30年くらい漫画家としてやっていますけど、みんながみんな絶対にそんなに簡単にプロになれるわけないですし。
とにかく今は友達もいて講義もおもしろいし、大学生活を楽しめているので、この選択をしてよかったと思ってます。
青木さん:学校選びは本当に博打ですよね。学校の雰囲気が良くても、人間関係でダメになる場合もあるかもしれないし……。大学も通えないかも、と思ってたもんね(笑)。
――大学生活を満喫されているということで本当に良かったです。中学・高校と比べるとかなり出席率が上がっている様子ですが、これまでとは違って通えている理由は何でしょうか?
ちゅんこさん:教室じゃないところ……かな。大学はクラス単位という意識もあまりないし。あの箱型の教室に40人くらいの生徒が入れられて、同じ話をされるのがしんどかった。
青木さん:「男子がいないのがいい」って言ってなかったっけ?
ちゅんこさん:それもある。全体的に雰囲気がおっとりしていて、女子だけのほうが気が楽。
――やはり男子はあまり得意ではないんでしょうか?
青木さん:男子ディスがすごいですね。大学もいくつか候補はあったんですが、最終的に女子大を選んだようで。
――大学生だと友だち同士でも「彼氏が……」といった話題も多くなりそうですが、そういう話などはありませんか?
ちゅんこさん:私の通っている学科がオタク寄りの学生が多いので、あまりそういう話は聞かないんですけど……。他の学科とか私たちが知らないところでは、あるんじゃないでしょうか(笑)。
「不登校」は恥じゃない。一歩前進するにはまず現状を受け入れるところから
――青木さんは、ちゅんこさんが不登校になってから塾や進学先、奨学金やローン関係など、本当にいろいろと調べて行動されていますが、「どうしよう」と思うばかりでなかなか行動を起こせない保護者の方も多いんじゃないかと思います。そういう方は、どうすれば一歩を踏み出せると思いますか?
ちゅんこさん:そもそも不登校を認めたくないんじゃないかなぁ……。
――確かに中には「周囲に知られたくない」「言いたくない」という方もいるかもしれませんね。
ちゅんこさん:「不登校」は恥じゃないから。私自身も「学校に行けない、ダメだ私……」ということを考え始めたら自分の中でキリがなくなるので、あんまり考えないようにしていて。まずはそういうところからかな。
青木さん:うちだけじゃなく周りにも不登校の子を持つ親がいたりするので、私も「娘が不登校で恥ずかしい」とは思ったことがないんですよね。
――中学生の場合、統計上ではおよそ1クラスに1人くらい割合で不登校の生徒がいる数字が出ていますね。
青木さん:私の周りは、自分が子どもだった頃に変わり者・個性的と言われて自由にやってきた人ばかりなので、そもそも他と違うことで恥ずかしいという気持ちがあまりないんですよね。
――なかなか行動を起こせないという方は、まず認める、現状を受け入れるということが突破口かもしれません。では、青木さん自身が我が子のいじめ、不登校などを経験して、教育現場のシステムで変わればいいなと思うこと、こういったサービスがあればいいなという要望などはありますか?
青木さん:私たちの学生時代はバブル期で景気が良かったので学歴が低くても仕事があったんですけど、今は学歴があっても就職が厳しいのに、さらに不登校で学歴もないとなるともっと大変じゃないですか。だから大学で学べるシステムがもっと整えばいいのになと思います。
あとは新卒で就職する際には四年制大学卒じゃないとまず受け付けてもらえない、という企業も多い。でもその割には、大学時代に学んだ知識が活かされる仕事というのは限られているので、そういう意識も変わってくるといいかな、と思います。
不登校を経験しても経験していなくても、最終的に目指すところはやはり「自立」
――娘さんが不登校になった中学時代から無事に高校を卒業し、大学に進学したわけですが、今後はどのように成長していってもらいたいでしょうか?
青木さん:もう今後は自立してもらうことしかないですよね。
ちゅんこさん:やだ、自立。ずっとスネかじっていたい(笑)。
――ちゅんこさんの年頃だと「家を出たい」「親がうっとおしい」という方も多いと思うのですが、そういう感情はないですか?
ちゅんこさん:趣味とかにしても環境が恵まれすぎてるから……(苦笑)。ご飯とか自分で用意するの大変そうですよね。
青木さん:別に家を出なくても家事などをやってくれればいいんです。それができてないからイヤなんです。
――言わなくても洗濯物を取り込んでおくとか、お米を研いでおくとかですよね。
青木さん:それです、まさに。家賃分のお金を家に入れて、家事を折半するとか、共同生活やシェアハウスと思って家で生活してくれる分には全然いいです。楽だからとダラダラ家にいられるのは困りますよね。一応料理はできるので、かなり助かっていますけどね。
ちゅんこさん:できるだけで得意ではないけどね……。
――では、最後に不登校に悩んでいるお子さんやその保護者の皆さんに一言お願いします。ちゅんこさんのお友達には不登校だった方はいらっしゃいますか?
ちゅんこさん:ネットで知り合った友達の中で不登校だった子が何人かいるんですけど、みんな普通に大学や専門学校に通ったりしています。
――中学は不登校でも高校・大学に進学して通えていたり、環境が変わると平気だったりするんですよね。
ちゅんこさん:だから不登校になったからってそんなに気負わなくてもいいと思う。
青木さん:それぞれの親御さんは大変だと思います。まさに渦中だと不安はありますよね。
――「登校できない、学校に行けない」という気持ちののままだと前に進まないので、ある程度気持ちが割り切れるといいですよね。
青木さん:それぞれのご家庭の事情もあるのでなんともいえないですけど……。そもそも勉強が嫌い、というお子さんは高校・大学に進学して新しい環境をというより、専門的な技術などを身につけるという方向で考えたほうがいいと思います。ケースバイケースで、学校が合わないならすぐ社会に出たほうがいいという子もいるでしょうし、学校になんとしても通いたいという子もいるでしょうし。どちらにせよ、お子さんが熱中できる何かを見つけられるのが大事かな、と思います。
――保護者としては、そのお子さんに合った道を一緒に探したり、サポートするという感じでしょうか。
青木さん:不登校ということを親としてはなかなか割り切れないので、そこがまず難しいと思いますが、柔軟に対応するのが重要ですかね。なんとかなると思うんですよ。
――青木さんの場合は、かなり上手にガス抜きをされていたようでしたが……。
青木さん:なるべく気分転換をするようにしていましたけど、当時はかなり葛藤しながらですよ。
ちゅんこさん:そうだったの?
青木さん:そりゃそうだよ!! 普通に学校に行って欲しいし、最終的にお金の問題もあるし。これから就職して、大人になってからももっと大変なことがあると思うよ。
――まだまだこの先、人生は長いですもんね。ありがとうございました!
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