ネットトラブルを早期発見!スクールガーディアンの活動とは?
不登校や登校拒否の一因にもなりうるネット上のトラブルやいじめ。それらの問題解決の手助けとなるよう、学校向けに様々なサービスを提供しているのがアディッシュ株式会社です。今回、同社スタッフに「スクールガーディアン」の活動についてお話を伺いました。
目次
アディッシュ株式会社 スクールガーディアン事業部 運用責任者/平田優さんインタビュー(1)
アディッシュ株式会社のサービス「スクールガーディアン」とは?
アディッシュ株式会社では、ネットいじめやトラブルの早期発見を目的としたネットパトロールをはじめ、子どもたちが安全にソーシャルメディアを活用できるよう、学校関係者をサポートする「スクールガーディアン」、いじめ匿名通報アプリ「Kids’Sign」といったサービスを提供しています。
「通信制高校ガイド」では、同社のスクールガーディアン事業部・運用責任者の平田優さんに行なったインタビューの模様を全3回に分けてお送りいたします。
第1回目は、「スクールガーディアン」の活動理念や事業内容についてです。
——まずは、スクールガーディアンの歴史、主な活動内容などを簡単に教えていただけますか?
平田さん:スクールガーディアン事業部を立ち上げたのは2007年なので、この事業を開始してから今年で10年目になります。スクールガーディアン事業部は、営業部、運用部、そして開発部で構成されていて、私は運用部の所属です。運用部では、日々ネットパトロールを行い、導入校の先生方からネットトラブルの相談を受けています。私共は生徒さんをインターネット上で見守るという事業部ですので、生徒さん自身についての書き込みを中心にパトロールしています。主な対象としては、学校に関する掲示板、裏サイト、ブログ、Twitter、動画共有サービス(Instagram)などの開かれた場所において使用されているサービスですが、近年で多いのはTwitterですね。
——やはりTwitterが主流なんですね。
平田さん:はい。Twitterというサービスは、手軽に発信できるがゆえに、トラブルが多いですが、子どもたちが学校の先生や親には言えないこと、心の声をツイートとして発信できるという良い面もあると思っています。
インターネット上やTwitterでしか吐き出せない思いが、子ども達には本当にたくさんあるんだなと日々感じています。
そして、危険な書き込みや問題が生じそうなものをただ見つけて削除させて終わり、ではなく、「子ども達が発信した心の声を先生方にも把握していただきたい」という思いで日々ネットパトロールを行なっています。
——では、ネットパトロールというのは実際にはどのように行なっているのでしょうか?
平田さん:学校名や略称、地域名といったキーワードを基に、インターネット上の書き込みなどを抽出していきます。最初は弊社独自の専用ツールでの対応ですが、そこから先は運用チームのスタッフが全て目視で内容を確認していきます。弊社の判断基準書をもとに、書き込みを照らし合わせて分類していくんです。「この表現だけだと問題はないけど、前後の文脈を見るとちょっと問題があるな」など、文字の向こう側の心理や背景を想像し、細かな判断が可能なのは、目視だからこそだと思います。
——リスクレベル別に分類、という部分を具体的に教えていただけますか?
平田さん:「要削除」レベルとは、例えば、詳細な個人情報が記載されている書き込みなどが該当します。これはうっかり自分の住所、メールアドレス、電話番号などを出しているケースです。個人を特定できる情報を誰もが閲覧できるところで発信しているので、まずは生徒さんや先生に危険であることをお伝えしていきます。
また、個人を特定して命の危険や自殺などをほのめかすような書き込みを発見した場合であれば、学校への連絡と併せて速やかに警察に連絡するなど連携します。「要確認」レベルとは、生徒指導に該当するような飲酒・喫煙といった行為、深夜徘徊、悩みの記述などが該当します。
——目視を行なっているスタッフは何名なのでしょうか?
平田さん:10名です。スクールガーディアン事業部がスタートした当初からいるスタッフなど、ベテランも多いんですよ。
子どもたちと直接会うわけではないのですが、スタッフたちは、誰よりも子どもたちの目線にたって対応し、「子どもたちの声をしっかり届けなければ」といった責任感が強いですね。
——その中で相談にあたってるのは何名ですか?
平田さん:相談は私を含めて約3人で、全員がWebカウンセリング協議会の認定の「ネットいじめ対応アドバイザー」という資格や「不登校対応アドバイザー」などの有資格者です。こういった有資格者が相談対応をしているという点は、学校様にとってひとつの安心材料になっていただけてると感じています。
——学校関係者向けにネットパトロールなどのサービスを提供している企業は複数ありますが、スクールガーディアンと他社さんとの違いはどういったところでしょうか?
平田さん:他社のネットパトロールサービスとの違いは、インターネットトラブルに関して困った時の相談窓口を設けている点だと思います。何か緊急性の高い書き込みがあった場合、相談したい時に相談していただけますし、連携を取って動く体制ができていますので、その点はすごく心強いと言っていただいています。
——それは本当に心強いですよね。
平田さん:スクールガーディアンでは、ネットパトロールの結果を先生方にレポートで報告する以外に、リアルタイムで閲覧できる専用のWeb画面もご用意しています。
——その他の活動はどういったものがありますでしょうか?
平田さん:クールガーディアンの特徴としては、二軸ございまして、まずひとつはネットパトロール、もうひとつは講演などの啓発活動です。講演の対象は、生徒さん向け、保護者様向け、教員向けとそれぞれ行なっています。3〜4年前までは生徒さん対象の講演が主流のように感じてましたが、まずは、大人(先生や保護者)向けに講演を、といった声が増えているのが現状です。
——生徒さん向けと大人向けの講演会では、内容は違うのでしょうか?
平田さん:大人向けの講演では、現代社会において、子どもたちがインターネット、ソーシャルメディアを避けて通ることは困難なので、禁止するのではなくリスクを教えた上で、使いこなせるよう家庭内での見守りやルールづくりなどをた中心にお話しています。
「私は大丈夫」、他人事感覚にネットトラブルの危険が潜む
——実際に講演を聞いている生徒さんの印象はいかがでしょうか?
平田さん:やはり私共が講師として一方的に話すだけでは、だんだん影響力が薄れてきてるかなという印象ですね。というのは、自分事として捉えきれず、「私は大丈夫」といった感覚の生徒さんが多いという風に先生方から聞いたことがあります。
——他人事なんですね。
平田さん:そうですね。ですが私共は、講演も続けていくことに意味があると思っていますので、たとえ生徒さんが他人事だと思ったとしても、スマホは身近にずっと持っているわけですから、日常生活において、ふと怖い思いをし、ハッとしたことで自分ごととして捉えていただければ、なと。少しでも子どもたちの意識を変えられるよう、継続してやっていきたいなと思っています。
——スマホ文化や生徒さん自身も成長していくので、「これはやってもいいけど、ここまでは駄目」という線引きが子どもたち自身でできていくのではないでしょうか?
平田さん:はい。生徒さん自身でネットリテラシーのポリシーを作ったり、自分たちで考えて実行していく方針にシフトしていくと思います。
そういった中で、全国の自治体においてネットパトロールであったり、独自のネットリテラシー、ルール作りに動き始めてきているところもあります。
——なるほど。では、大人向けの講演会の反応はいかがでしょうか?
平田さん:アンケートなどを見ると、やはり「知らないことが多かった」、「子どもの方がよく知っている」という声が多いです。
あと、子どもには使う場所や時間の制限、ながらスマホを注意しておいて、お母さんが子どもの前で家事をしながらママ友とLINEグループで会話をしているなどといった家庭は実は多いんじゃないかと思います。子どもは親をしっかりと見ていますから、「これをやっちゃダメ」と子どもに注意をする前に、家庭内で子どもと同じルールで親も動いてみることが大事なのでは、という声が、講演会の後に返ってくることもありますね。ですので、保護者の方もまずは子どもさんと同じような目線に立って、その上で家庭の中で話し合いの場を持っていただきたいです。
第2回「スクールガーディアンが目にしたネットトラブルの実例とは?」へと続きます。